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●岐阜県裏金事件・住民監査請求のページ
監委第102号
平成18年11月7日
「〈らし・しぜん・いのち岐阜県民ネットワーク」
寺町知正 様
岐阜県監査委員 木 股 米 夫
岐阜県監査委員 市 川 尚 子
岐阜県監査委員 田 中 敏 雄
岐阜県監査委員 河 合 洌
住民監査請求について(通知)
平成18年10月12日に提出のあ?た岐阜県常勤の特別職三役の退職金にかかる住
民監査請求書について、請求の内容を審査した結果は下記のとおりである。
記
請求人が、常勤特別職三役の退職金に関して返還等を求めてなした、本件請求の内容
は概ね次の2点と解される。
1 過去20年間に岐阜県知事、副知事、出納長ら常勤特別職三役に支給した退職金
の全額(含む利息)の返還(「梶原知事職」分を除く)並びに各交付時の知事及び交
付決定者と受益者に対して、各自に対応する退職金相当分の損害(含む利息)の返
還請求・賠償請求をしない場合の知事の違法な怠る事実の是正
2 退職金支出の根拠が欠如した状態での常勤特別職三役への退職金支出の差し止め
並びに現状で支給した揚合は、知事及び交付決定者と受益者が弁済する義務を負う
との通告
地方自治法第242条第1項に規定する住民監査請求は、違法又は不当な財務会計上
の行為により、地方公共団体に財産的損失を生じ、又は生じるおそれのある場合に、当
該行為の是正又は未然の防止を目的としてなされるものである。
また、同条第2項では「前項の規定による請求は、当該行為があった日又は終わった
日から1年を経過したときは、これをすることができない。ただし、正当な理由がある
ときはこの限りではない。」としている。
1の本件請求の要旨によれば、請求人は、常勤特別職三役の退職金の支出及びその支
出額は、県民が知ることができないように秘密裏にされてきたのであって、平成18年
10月4日の県議会ではじめて明らかになったのだから、住民監査請求の期間が徒過し
たことには正当な理由があると主張している。 ・
正当な理由については、平成14年9月12日最高裁判所判決によれば、「特段の事情
のない限り、普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査したときに客観的に
みて当該行為を知ることができたかどうか、また、当該行為を知ることができたと解さ
れる時から相当な期間内に請求したかどうかによって判断すべきものである。」旨判示し
ているところである。
この判決の趣旨を踏まえて本件請求についてみると、常勤特別職三役の退職金につい
ては、「知事、副知事及び出納長給料その他給与条例」(昭和24年岐阜県条例第18号)
において従前より退職給与金として規定されており、制度自体が存在することは広く一
般が知り得べき事実であり、この規定に基づく退職金の支出についても、一般的に容易
に推測できるものと認められる。
請求人は、何ら疎明することなく、退職金の支出が秘密裏に行われてきた旨主張して
いるが、以上のように、社会通念上秘密裏とは言い難いものであり、請求人が上記最高
裁判決において判示している相当の注意力をもって調査したときに、客観的にみて当該
行為を知ることができたと認められる。
よって、本件請求の1については、法第242条第2項ただし書にいう「正当な理由」
があるとは認められないため、要件を欠き不適法である。
2の本件請求において監査請求の対象としている行為は、将来、支出される常勤特別
職三役への退職金支出と解するが、先に述べた法第242条第1項の住民監査請求は、
違法又は不当な財務会計上の行為が相当な確実さをもって予測される場合に、当該行為の防止、
是正等を図るため、必要な措置を講ずべきことを請求することができる制度である。
すなわち、当該行為がまだ行われていない場合にあっては、単に当該行為がなされる
可能性が漠然と存在するというだけでなく、その可能性、危険性等が相当の確実さをも
つて客観的に推測される程度に具体性を備えていることを要すものである。
しかしながら、本件請求書には、常勤特別職三役に対する退職金の支出の可能性を示
す上記の具体的な事実が摘示されていない。
以上により、本件全ての請求については、地方自治法第242条に定める住民監査請
求の対象には該当しないため、請求を却下する。