2002年5月27日
岐阜県警本部刑事部捜査2課司法警察員警視 清水貴一 様

《被告発人》

 T 岐阜県山県郡高富町東深瀬521番地     山崎 通
 U 岐阜県山県郡高富町西深瀬1217番地    川田 忠
 V 岐阜県山県郡高富町東深瀬1502番地    村瀬静嘉
 W 岐阜県山県郡高富町東深瀬172番地の2   村瀬 均

《告発人》

    山県郡高富町西深瀬208 TEL・FAX 0581-22-4989 
              寺町知正(職業:高富町議会議員)

《告発の趣旨》

 被告発人らは「高富経済クラブ」もしくは「山崎とおる後援会」の収支において、政治資金規正法第24条第1項第3号で罰則を定める同法第11条第1項、同法第25条第1項第3号で罰則を定める同法第12条第1項、同法第25条第2項で罰則を定める同法第12条第1項並びに公職選挙法第249条の5の第1項で罰則を定める同法第199条の5の第1項に違反する行為に係って、各人役職に対応した罪を犯した容疑があるので、速やかに捜査の上、刑事処分を求めます。

《告発の理由》

第1 政治団体と収支

1 「高富経済クラブ」は被告発人山崎通を代表、会計責任者を被告発人川田忠とする政治団体であり、かつ、「山崎通」を候補者とする政治資金管理団体(政治資金規正法第19条1項)である(第1〜3号証/各1枚目)。
 「山崎とおる後援会」は従前より被告発人山崎通が代表であり、会計責任者を被告発人村瀬均とする政治団体である(第4〜7号証/各1枚目)。


2 政治資金規正法第12条第1項に基づき岐阜県選挙管理委員会に提出された「高富経済クラブ」の収支報告書は平成11年分より存在している(同年設立のため)。
 (1)平成11年(この年は「高富政経研究会」の名称)の収入は308万4023円、支出は109万7942円・翌年繰越額198万6081円である(第1号証/2枚目の1の欄)。
 支出のうち政治活動費の寄附・交付金はない(第1号証/5枚目の3−2−(5))。

 (2)12年の収入(除く繰越額)は、354万4277円、支出は3881万1811円・翌年繰越額164万8547円である(第2号証2枚目の1の欄)。
 支出のうち政治活動費の寄附・交付金は40万円で、その支出の目的は「山崎とおる後援会活動費」(事務所所在地の住所は被告発人村瀬静嘉の自宅である)として5月30日付け5万円、9月13日付け20万円、10月1日付け15万円であり、備考欄に記入がないのは領収書の添付があることを示す(第2号証/9枚目の(2)(5)の欄)。

 (3)13年の収入(除く繰越額)は、190万8472円、支出は142万1880円・翌年繰越額213万5139円である(第3号証/2枚目の1の欄)。
 支出のうち政治活動費の寄附・交付金は125万8000円で、その支出の目的は「山崎とおる後援会活動費」(所在地は被告発人村瀬静嘉自宅)として2月26日付け40万円、3月16日付け25万8000円、12月25日付け39万3500円以上3件合計105万1500円、「高富中学校行事協賛」として12月25日付け20万6500円であり、中学校分以外に備考欄に記入がないのは領収書の添付があることを示す(第3号証/5枚目の(2)(5)の欄)。

3 政治資金規正法第12条1項に基づき県選管に提出された「山崎とおる後援会」の収支報告書は平成10年分(第4号証)、11年分(第5号証)、12年分(第6号証)、13年分(第7号証)のいずれも、「収入無し、支出無し」である。

4 なお、会計責任者は政治資金規正法第29条に基づき、収支報告書の記載が真実であることの宣誓書を添付している(第1〜7号証の各最終ページ)。

第2 法令違反と罰則

1 平成12年分の「高富経済クラブ」から「山崎とおる後援会」への寄附に関して
 平成12年分の「高富経済クラブ」の収支報告書(第2号証/9枚目の(2)(5)の欄)記載のとおり、「山崎とおる後援会」に3件合計40万円の寄附を行ったことが真実なら、「山崎とおる後援会」の会計責任者である被告発人村瀬均は「寄附を受けたにもかかわらず、収入無し」と報告したことにつき県選管への報告(政治資金規正法第12条第1項)における虚偽記入の罪(同法第25条第1項第3号)がある。
 もし「山崎とおる後援会」が寄附を受けていないなら、「高富経済クラブ」の会計責任者である被告発人川田忠には岐阜県選挙管理委員会への報告における虚偽記入の罪(同法第25条第1項第3号)及び領収書(同法第11条第1項)に虚偽を記入した罪(同法第24条第1項第3号)がある。

2 平成13年分の「高富経済クラブ」から「山崎とおる後援会」への寄附に関して
 平成13年分の「高富経済クラブ」の収支報告書(第3号証/5枚目の(2)(5)の欄)記載のとおり、「山崎とおる後援会」に3件合計105万1500円の寄附を行ったことが真実なら、「山崎とおる後援会」の会計責任者である被告発人村瀬均は「寄附を受けたにもかかわらず、収入無し」と県選管へ報告したことにつき虚偽記入の罪(同法第25条第1項第3号)がある。
 もし「山崎とおる後援会」が寄附を受けていないなら、「高富経済クラブ」の会計責任者である被告発人川田忠には県選管への報告における虚偽記入の罪(同法第25条第1項第3号)及び領収書に虚偽を記入した罪(同法第24条第1項第3号)がある。

3 「高富経済クラブ」の政治活動費の寄附(「高富中学校行事協賛」費)に関して
 (1) 平成13年分の「高富経済クラブ」の収支報告書(第3号証/5枚目の(2)(5)の欄)には、「高富中学校行事協賛」として12月25日付け20万6500円の寄附が記載されている。
 そもそも、政治団体の活動の設立目的によらない事業に関する寄附は一切禁止されている(公職選挙法第199条の5の第1項)。
 「高富経済クラブ」の設立目的をみると、「平成11年度(第一期)高富政経研究会総会資料(第8号証/5枚目)」及び「平成13年度(第三期)高富経済クラブ総会資料(第9号証/5枚目)」にあるとおり、同会規約の第3条《目的》「この会は、地域の政治と経済の発展に寄与することを目的とする。」だけであって、地域の文化・教育活動への参加や支援等は組織の設立目的となっていない。
 よって、寄附を行ったことが真実なら、「高富経済クラブ」の役員である被告発人山崎通、同川田忠には、当該団体の代表者として罰則(同法第249条の5の第1項)が適用される。

 (2) @ところで、高富町立高富中学校側には寄附を受けた記録もないし、寄附を受けたとの認識もない。高富町立の小中学校予算の執行・配当元である高富町教育委員会にも寄附を受けた記録もないし、寄附を受けたとの認識もない。
 地方自治法第96条第1項第9号の議決や予算計上(第10号証)もない。
 高富町に対して寄附をする場合の一般手続きは、「寄附採納願い」の書面を町長もしくは教育長宛に提出(寄附の意思をもつものが、「寄附をしたいので受け取って欲しい」と申し出る書類)、これに対して町長もしくは教育長が受納するとの意思表示してのちに実際の寄附が行われるものである。

     Aよって、正当に寄附手続きが行われていれば、寄附行為を示す公文書を収支報告に領収書として添付することは極めて容易であるが、収支報告書には領収書の添付がなく(第3号証/5枚目(5)備考欄)、領収書等を徴し難い事情がある場合(政治資金規正法第11条第1項)として岐阜県選挙管理委員会に報告されたことになっている。

     B 以上のことから、実際には、高富中学校もしくは高富町教育委員会に何ら当該寄附がなかったと考えるのが合理的である。よって、会計責任者である被告発人川田忠は県選管への報告における虚偽記入の罪(同法第25条第1項第3号)及び領収書に虚偽を記入した罪(同法第24条第1項第3号)がある。

4 政治団体の代表者の責任
 (1) 以上の収支等は「高富経済クラブ」の銀行口座に記録されていると考えるのが合理的である(第11号証)。

 (2) 被告発人山崎通は、平成13年9月頃まで「山崎とおる後援会」の代表であったから、12年の40万の寄附及び13年2月26日付け40万円、同3月16日付け25万8000円の2件合計65万8000円の寄附を受領したことに関して、会計責任者である被告発人村瀬均が岐阜県選挙管理委員会に虚偽の報告をしたことにつき、代表者としての監督義務違反の罪(同法第25条第2項)がある。

 (3) 被告発人村瀬静嘉は、「山崎とおる後援会」の代表に平成13年9月頃に就任していた(第12号証)。よって、同年12月25日付け39万3500円の寄附を受領したこと(寄附金交付先の所在は被告発人村瀬静嘉自宅/第3号証/5枚目の(5)の欄)に関して、会計責任者である被告発人村瀬均が県選管に虚偽の報告をしたことにつき、被告発人村瀬静嘉は代表者としての監督義務違反の罪(同法第25条第2項)がある。
 (4) 平成12年に「高富経済クラブ」から「山崎とおる後援会」への3件合計40万円の寄附及び13年の「高富経済クラブ」から「山崎とおる後援会」「高富中学校行事協賛」合計125万8000円の寄附に関して、もし寄附を行っていないのであれば、会計責任者である被告発人川田忠が虚偽報告をしたこと及び領収書に虚偽を記入したことにつき、被告発人山崎通は代表者としての監督義務違反の罪(同法第25条第2項)がある。

《書証目録》

第1号証 平成11年分「高富経済クラブ」の収支報告書の写し
第2号証 平成12年分    同上
第3号証 平成13年分   同上
第4号証 平成10年分「山崎とおる後援会」の収支報告書の写し
第5号証 平成11年分 同上
第6号証 平成12年分 同上
第7号証 平成13年分 同上
第8号証 平成11年度(第一期)「高富政経研究会」総会資料
第9号証 平成13年度(第三期)「高富経済クラブ」総会資料
第10号証 「予算の見方・作り方」(学陽書房刊)の寄附金の解説
第11号証 平成13年12月25日付け
     「高富経済クラブ会長山崎通」発の会費納入依頼
第12号証 平成13年10月2日付け
     岐阜県選挙管理委員会告示第93号の写し
                         以 上

(資料)《政治資金規正法》

(定義等)
◆第3条  この法律において「政治団体」とは、次に掲げる団体をいう。
 1  政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、又はこれに反対することを本来の目的とする団体

 2  特定の公職の候補者を推薦し、支持し、又はこれに反対することを本来の目的とする団体

 3  前二号に掲げるもののほか、次に掲げる活動をその主たる活動として組織的かつ継続的に行う団体
  イ 政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、又はこれに反対すること。
  ロ 特定の公職の候補者を推薦し、支持し、又はこれに反対すること。
(政治団体の届出等)
◆第6条  政治団体は、その組織の日又は第3条第1項各号若しくは前条第1項各号の団体となった日から7日以内に、郵便によることなく文書で、その旨、当該政治団体の目的、名称、主たる事務所の所在地及び主としてその活動を行う区域、当該政治団体の代表者、会計責任者及び会計責任者に事故があり又は会計責任者が欠けた場合にその職務を行うべき者それぞれ1人の氏名、住所、生年月日及び選任年月日、当該政治団体が政党又は政治資金団体であるときはその旨その他政令で定める事項を、次の各号の区分に応じ当該各号に掲げる都道府県の選挙管理委員会又は総務大臣に届け出なければならない。

 2  政治団体は、前項の規定による届出をする場合には、綱領、党則、規約その他の政令で定める文書を提出しなければならない。

(会計帳簿の備付け及び記載)
◆第9条  政治団体の会計責任者は、会計帳簿を備え、これに当該政治団体に係る次に掲げる事項を記載しなければならない。
 1  すべての収入及びこれに関する次に掲げる事項
  イ 個人が負担する党費又は会費については、その件数、金額及び納入年月日
  ロ 寄附については、その寄附をした者の氏名、住所及び職業(団体の場合は主たる事務所の所在地及び代表者の氏名。)並びに当該寄附の金額及び年月日

 2  すべての支出(当該政治団体のためにその代表者又は会計責任者と意思を通じてされた支出を含む。)並びに支出を受けた者の氏名及び住所(団体の場合は、その名称及び主たる事務所の所在地。)並びにその支出の目的、金額及び年月日

(会計責任者等が支出をする場合の手続)
◆第11条  政治団体の会計責任者又は政治団体の代表者若しくは会計責任者と意思を通じて当該政治団体のために支出をした者は、1件5万円以上のすべての支出について、当該支出の目的、金額及び年月日を記載した領収書その他の支出を証すべき書面(以下「領収書等」という。)を徴さなければならない。ただし、これを徴し難い事情があるときは、この限りでない。

(報告書の提出)
◆第12条  政治団体の会計責任者は、毎年12月31日現在で、当該政治団体に係るその年における収入、支出その他の事項で次に掲げるものを記載した報告書を、その日の翌日から3月以内に、都道府県の選挙管理委員会に提出しなければならない。

 2  政治団体の会計責任者は、領収書等の写し(領収書等を徴し難い事情があったときは、その旨並びに当該支出の目的、金額及び年月日を記載した書面)を併せて提出しなければならない。

(資金管理団体の届出等)
◆第19条  公職の候補者は、その者がその代表者である政治団体のうちから、一の政治団体をその者のために政治資金の拠出を受けるべき政治団体として指定することができる。

(罰則)
◆第24条  次の各号の一に該当する者(会社、政治団体その他の団体(以下この章において「団体」という。)にあつては、その役職員又は構成員として当該違反行為をした者)は、3年以下の禁錮又は50万円以下の罰金に処する。

  1号  第9条の規定に違反して会計帳簿を備えず、又は同条、第18条第2項若しくは第19条の4の規定に違反して第九条第一項の会計帳簿に記載すべき事項の記載をせず、若しくはこれに虚偽の記入をした者

  3号  第11条の規定に違反して領収書等を徴せず、若しくはこれを送付せず、又はこれに虚偽の記入をした者

◆第25条  次の各号の一に該当する者は、5年以下の禁錮又は100万円以下の罰金に処する。

  3号  第12条第1項若しくは第17条第1項の報告書又はこれに併せて提出すべき書面に虚偽の記入をした者

 2項  前項の場合(第17条の規定に係る違反の場合を除く。)において、政治団体の代表者が当該政治団体の会計責任者の選任及び監督について相当の注意を怠つたときは、50万円以下の罰金に処する。

(報告書の真実性の確保のための措置)
◆第29条  第12条第1項の規定による報告書を提出する者は、これらにそれぞれ真実の記載がされていることを誓う旨の文書を添えなければならない。


        《公職選挙法》
(後援団体に関する寄附等の禁止)
◆第199条の5
 政党その他の団体又はその支部で、特定の公職の候補者若しくは公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。)の政治上の、主義若しくは施策を支持し、又は特定の公職の候補者若しくは公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。)を推薦し、若しくは支持することがその政治活動のうち主たるものであるもの(以下「後援団体」という。)は、当該選挙区内にある者に対し、いかなる名義をもってするを問わず、寄附をしてはならない。ただし、政党その他の政治団体若しくはその支部又は当該公職の候補者若しくは公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。)に対し寄附をする場合及び当該後援団体がその団体の設立目的により行う行事又は事業に関し寄附(花輪、供花、香典、祝儀その他これらに類するものとしてされるもの及び第4項各号の区分による当該選挙ごとの一定期間内にされるものを除く。)をする場合は、この限りでない。

(後援団体に関する寄付等の制限違反)
◆第249条の5
 後援団体が第199条の5第1項の規定に違反して寄附をしたときは、その後援団体の役職員又は構成員として当該違反行為をした者は、50万円以下の罰金に処する。
以上