本のこと
寺町ともまさ
昨年6月末に岐阜で建築学会が開かれた。
テーマは、県民ネットが取り組んでいる県営「北方住宅」。
上野千鶴子さんから、パネラーとして呼ばれているが資料がないと聞いた。上野さんは社会学者であるとともに、建築やひとの住まいかたにも識見が深い。
7月、来訪された上野さんが、無党派市民派の議員を増やす活動について、みどりさんに“ノウハウを世に出すべし”と出版を勧めた。単著でも、私との共著でもよいから、と。
翌日、構成の原々案がメールで届いた。その早いこと。
その気にならないみどりさんを見て、私が「せっかくのいい機会だから、今までの運動のまとめと今後の展望にもなるし書きましょう」と上野さんに返信。現場ですぐ使えるハンドブックにしよう、と案が進む。
一週間ほどでみどりさんが「共著なら書く」と。この時点で私は書かないことを決めていた。女性だけで組んだほうがいろんな意味でインパクトがあるから。
県民ネットは’99統一自治体選挙の前に、無党派市民派の議員を増やすための講座を開いた。その際も「政党にはノウハウ・組織・人材・金がある、それに対抗して市民派が当選するためのノウハウだから、政党関係者はお断り」と明確に線を引いていた。
本にして選挙のノウハウをどこまで誌面で不特定の人に書くのか、見切りに悩んだ。講座で マル秘 とする部分だ。
つまりこの本には、選挙に関しては核心部分はわざと説明がない(著者に配慮をお願いした)。無論、理解力のある人なら十分に読み取れるようにはなっているから、「選挙に出る人は必読!」に変わりはない。 当選して議会に行くと、分からないことばかり。この本には、次から次と出てくる分からないところや疑問への答、方向が出ている。無党派の議員も政党人も誰でもすぐに役立つ。本のサブタイトルは「当選から、再選まで」となっているが、こり本は、二期目以上でも役に立つ。
最後に私の大きな懸念。
多数派議員や行政側が市民派議員の手の内を知ってしまうこと。
でもそれは、このニュースの巻頭の岐阜地裁が県知事に判示した−「能力格差に由来する」「甘受すべき」「公正な競争秩序」「非公開とすることは本末転倒である」−のとおりだね。