補助金の不正受給に
ついての調査結果から


(特別養護老人ホーム「友和苑」建設にかかる老人福祉施
設整備費補助金の不正受給についての岐阜県の調査結果
の書類(情報公開分)の中の重要部分を県民ネットが抜粋し
たもの。これらに基づいて、関係者を告発した)

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 

1 法人設立等の経緯

 (福)麋城会は、特別養護老人ホーム等の老人福祉施設を
建設する目的で、平成7年12月19日に「(福)麋城会設立発
起人会」を開催し、法人設立の準備を進め、県から平8年7月
5日「(福)麋城会」の設立認可を受けた。

2 県への通報

 特別養護老人ホーム「友和苑」の建設にあたり、匿名
の者から「契約に基づく工事をさせてもらえない」との通報
(平成11年4月1日、以後数回)があり県の高齢福祉課が
現地調査等を行ったところ、社会福祉法人ぎ城会(以下「
(福)麋城会」という。)が補助金を不正に受給していたこ
とが判明した。

3 (福)麋城会による補助金不正受給事案の調査結果

 県の特別監査及びその他現地検査によって、契約当
事者間での工事代金の値引きを約した確約書が発見され
るとともに、ソーラーシステム等未実施の付帯工事やベッド
等未購入の備品があることが判明したため、それらを差し
引いた実際の事業費に基づく事業実績報告書を作り直した。

4 事実調査

(1)県の特別監査で明らかとなった問題点(実施日、平成
11年8月11日)
@補助対策事業費(建設工事契約額)について
 (福)麋城会とA社の間で請負契約時の合意事項を確認し
た確認書なるもの(平成9年10月の日付)が見つかり、それ
には本来の工事請負金額が契約書に記載された額とは異な
る旨の記述があったため、契約額を根拠としてきた事業費
の額を修正しなければならなくなった。
  ・ 契約による支払額   1,771,600,000円
  ・ 確認書による支払額 1,758,148,200円
            指 引   ※13,451,800円
  ※ 差額は、追加工事代金に充てられた。

A適正な理事会運営について
 建設事業に関することや資金計画など本来理事会で審
議されるべき事項について、実際に審議されたかどうかは
議事録で確認できない(審議されていない)。
 また、平成10年度決算について未だ理事会で審議され
ていないことなど、今年度の理事会開催も著しく遅延してお
り、適正な理事会運営がなされているとはとても言えない。
 ついては、理事会を早期に開催し、必要な事項を審議
するようにしなければならない。

B借入金について
 平成10年度決算時点(理事会に付議されていないの
で未承認)で、5億2千万円であり、うち2億円については
これまで「寄付金」で処理されてきたものを平成11年3月
31日付けで「借入金」に修正仕訳されたために発生した
こととなっているなど、通常考えられない処理をされてい
る。また、これらのことは全く理事会に諮られずに処理さ
れている。
 また、多大な借入金について、償還計画を提出する
よう県が従前より強く指導した。
この借入金の内訳は、B銀行からの4億7千万円、
C銀行から5千万円となっているが、前者は「手形貸付」
であり、借入日数の短いものを繰り返した結果でとても
計画的な借入とは考えられず、また、この借入に係る
保証等の内容も不明である。一方、後者についても貸
付契約書等の証拠書類が施設に保管されていないと
のことで、提示されていない。

(2) 県の現地検査で明らかとなった問題点(実施日、
平成11年4月8日)
 
@建設工事について
・国庫補助対策設備である非常通報装置は、実績報告書
では別会社の契約書・領収書が添付されているが、実際に
は本体工事に含めており、間違った補助金交付申請がなさ
れていた。
・同じく特殊浴槽機器にも、実績報告書では別会社の
契約書・領収書が添付されているが、実際には本体工事に
含めており、間違った補助金交付申請がなされていた。
・その他カーテン・ブラインド等設備として処理すべきも
のを、本体工事の中に含めていた。

A備品購入について
・セキュリティシステム工事、非常警報装置の契約書
原本が保管されておらず、業者へ代金を支払った実績も
なかった。
・購入していない特殊浴槽が、業者の納品書に記載さ
れており、施設側で検収したことになっていた。
・デイの設備整備費に含めた移動縁台の代金を後で減
額していた。
・冷温配膳車の契約書原本が保管されておらず、業者
へ支払った実績もなかった。

(3) 県の現地検査で明らかとなった問題点(実施日、
平成11年6月7日)
@建設工事について
・前回の検査によりカーテン等本体工事から除外すべ
きものを指摘したところであるが、今回、さらに次の品目
を除外するよう指示した。
  〇 畳敷移動縁台
  〇 観賞用水槽
  〇ファクシミリ
・ A社との間で、契約書の外に確認書等を交わしており、
不可解な請負関係であり、未払い金(8,450,150円)が
生じていた。

 この時点で、麋城会は、契約に基づく(T)しか支払って
おらず、未払い金(W)を請求しているA社と争う構えであった。
 しかし、後(8月11日の特別監査時)に次の事が判明し
、覆ることになる。
・確認書に平成9年3月31日時点の合意事項であると明確
に書かれていること。
・注文書による工事の期間は平成9年5月1日から同月
31日までであり、補助対象外の事業であると認定できること。
・支払いを拒否し続けていた未払い金を11年度予算から支
払う準備をしており、麋城会側としても確認書及び注文書が
合意に基づくものであると認めたこと。

(4) 補助として追加認定
 当初の実績報告より一括して除外費用としていた厨房設
備について、一部施設と一体のものとして本体工事に計
上できないか相談があったため、現地で確認した。(県の現
地検査、平成11年7月26日)。
結果、次の設備を本体工事に算入することを認めた。

  〇 プレハブ式大型冷蔵庫
 〇 大型食器洗浄機

5 補助金の不正受給の方法等

 (福)麋城会は、法人設立許可を受け建設業者10社の
入札により平成8年7月10日工事請負契約を締結し建設
に着手した。
 平成9年4月4日、県に提出された補助金実績報告書
には、実施していない重度痴呆性老人徘徊管理のための
セキュリティシステム等を記載したり、建設工事の中で設置
した車椅子入浴装置等の備品について、他の業者からの
見積・請求・納品書を添付する等の方法により虚偽の報告
を行った。
 補助金の不正受給については、補助対象外工事費へ
の流用、民間金融機関への償還等に充当されたと思わ
れる。

(2)事件関係者
 補助金の不正受給は、(福)麋城会の設立準備段階か
ら関与していた氏名不詳のものと事務的な業務に携わって
いた氏名不詳の者の2人であると思われる。
 また、補助金不正受給に対する法人の理事長としての
監督責任は免れない。(県もこの点、認めている。)(福祉
局長弁「明確な悪意が感じられる部分もある」2月24日中日
新聞)
 事業者も申述書(いわゆる始末書)でも、不正受給を認
めている。

6 補助金の精算、修正額の確定、責任等
(1)補助金不正受給額の返還命令
 県は、岐阜県補助金等交付規則第18条第1項に基づき、
不正に受給した補助金の返還を命じた。
 国庫補助金分 16,463,000円
 県義務補助分  8,233,000円
 県単独補助分 20,444,000円
             45,140,000円
 なお、当該補助金の受領の日から返還の日までの日数に
応じ、同規則第19条第1項に基づき加算金の納付をあわせ
て命じた。
 
(2) 返還額の実質的な減額
しかし、当初の補助金決定時点での審査で補助対象外であ
ったものを、今回の事件に伴う返還金の精算の中で、あえて
補助対象と認定した。その額は次のようである。
 ◎施設整備費
   ・特別養護老人ホーム     36,338,084円
   ・ケアハウス           15,968,191円
   ・老人デイサービスセンター   3,410,545円
 ◎設備整備費
   ・特別養護老人ホーム      3,064,658円
   ・ケアハウス               35,227円

 以上、返還額から合計58,816,705円を差引して減額
したのと同様の結果とした。延滞加算金を加えて考えれば、
135,768,398円の返還額であるところ、59,296,048
円の返還で済むことにしてしまった。(但し、私たちは、この返還
額の認定については、県の認識をとりあえずは受け入れることとした)

 
         国県基金への返還額     修正増額した分     本来の総合計額
補助金   45,606,000  58,816,705 104,422,705
延滞加算金 13,690,048  17,655,645  31,345,693
合計    59,296,048  76,472,350 135,768,398


(3)法人及び役員の責任等
 県は、法人及び役員の責任については、社会福祉事業法
第54条第2項の規定に基づく業務改善命令を行った。
 @本件の不正受給に関わっていた氏名不詳の者及び監
督を怠っていた理事長の交替を求めた。
 A法人運営及び施設運営の適正化を図るべき理事会の
機能が十分に果たしていないことに鑑み、理事の交替を求
めた。ただし、理事全員の交替は、今後の適正な法人運営
に著しく支障きたす恐れがある。そのため、法人設立当時
から就任しその職責を十分果たさなかった理事について交
替を求めた。
 B監事についてもその職責を果たしていないため交替を
求めた。

(4)補助金返還に伴う財源の確保
 今回の補助金不正受給に伴う返還金は、理事長である
「名和嘉久氏」個人の寄付により返還させる。
・民間金融機関からの借入金に対する償還計画
 法人に対し、ケアハウスの管理費・民間給与等改善費
管理費加算相当額等による実現性のある償還計画を早
期に作成させ、健全な法人運営に努めるよう今後とも厳し
く指導していく。

7 県の姿勢が甘い

 (1)厚生省は厳しい姿勢
 県は、事件の認識後、厚生省と何度も協議している。平成
11年8月27日(金)老人福祉計画課と協議を行ったところ、
次の3点について指摘があった(H11,10,15付け文書)。
 ◆追加契約1億3千万は、国内示額の範囲内か。
通常変更協議は、簡単に認めていないはずである。
 ◆補助金不正受給を行った(福)麋城会に対する処分につ
いて、次の事項について県の対応を教えてほしい。
  ア 告発はしないのか。
  イ 記者発表はしないのか
  ウ だれの責任で、何のため、何を行ったのか、金の
行方はどうなったのか。
  エ 補助金を返せば済むのなら再発防止にならないの
で、厳格な処分をしてほしい。

 (2)これに対する県の対応
◆追加契約は、本工事とは別のものであると同時に、当初
内示額内での変更である。
◆法人及び理事の責任は免れないと思われるので記者
発表を行う。
◆告発について
 本県の他の補助金不正受給と比して計画的でないこと
等の理由により行わない。

()告発人の見解
 「本県の他の補助金不正受給」とは、本事件と全く同時期
に認可された黒野あそか苑を指す事は明らかであるが、この
場合、刑罰が課され、確定している。
 本事件は、一見して被害額が一桁少ないが、それでも貴
重な国民の税金を数千万円も不正に奪取した行為はゆるさ
れるものではなく、右述べたように、返還額を差し引くような
異常な精算方法が取られなければ、本来の返還額は1億円
を上回るものである。
 厚生省の指摘のとおり、再発防止には、厳しく望むしかな
く、黒野あそか苑の際は、事件発覚の数日後に、岐阜県、
岐阜市が名古屋地検特捜部に告発しているにもかかわらず、
今回、告訴、告発をしないことは、右減額とともに、極めて不
可解である。
 よって、県民の立場から、関係者を告発するものである。
                               以   上

麋城会の補助金返還に至る経緯

H8.3.5 国庫補助協議会(厚生省ヒアリング)
   5.30 国庫補助内示  
    5.31 麋城会に対し県費補助内示
    7.5 法人設立岐阜県認可
   7.17 建設工事着手
   10.1 追加工事契約
H9.3.28 施設完成
   3.31 補助金交付決定(公共分・県単独分とも)
   5.14 事業開始
   5.30 施設整備補助金支払い(公共分・県単独分とも)
H11.4.1 ※請負業者を名乗る者からの電話相談
    4.6 麋城会が来庁、事情説明
   4.8 県の現地調査(高齢福祉課)
   4.12 これ以降、実績報告書再作成の打ち合わせ
        指導
   6.24 県、実績報告書修正分を受理(のちに再度
        修正)
   7.15 麋城会側が県福祉局長に面会、補助金
        返還を拒否する発言
   7.23 大型厨房機器(プレハブ冷蔵庫等)を本
        体工事費の中に算入するよう要望したため、
        実績報告書 の見直しを検討
   7.26 県担当者、大型厨房機器等の現地確認
    8.2 麋城会側が県出納長に面会。
    8.5 麋城会側から、返還する意志を固めた旨の電話
        連絡
   8.11 県の特別監査。工事代金の値引きを約する
        確約書を発見、実績報告書修正
   10.8 麋城会側が県福祉局長と面会、補助金返還
        について概ね了解
   11.4 次の事項について文書での提出を指示
       @補助金不正受給に至った経緯
       A不正受給の方法及びその使途
       B補助金の不正受給に関わった者の特定
   11.16 (福)麋城会から上記@〜Bについては、
         提出できない旨の報告
   12.15 補助金返還は全額「名和嘉久」個人が法人
         に寄付し返還する旨
 
    ※本事案調査きっかけとなった電話情報とは、友和苑
の建設にあたり、セキュリティシステムの工事を請け負った業
者を名乗る者から、「システム機器納入直前にストップがかか
り、契約に基づく工事をさせてもらえないので困っている」との
電話を高齢福祉課の担当者が受けた、というもの。

◆◆◆◆◆◆◆今後のこと
(3)特別検査の実施
 (1)の運用基準施行以前に完成した施設については、
補助金交付申請書や実績報告書等の書類審査によるチ
ェックを行っていることに過ぎなかったこと、岐阜龍谷会の
補助金不正受給事件に続き、本件のような同様の事案が
起きたことを踏まえて、改めて検査を行うこととした。
 〇検査対象施設
 平成8年1月から平成9年6月までにオープンした特別
養護老人ホーム(6施設)

8 今後の法人運営に対する指導方針
@適正な法人運営及び施設運営を行うにふさわしい理事
・監事が選任されるよう指導していく。
A民間金融機関からの借入金に対する償還が、償還計画
どおりに実施されるとともに早期返還に向けて努力するよう
指導していく。
B理事会が適正に運営され、議決事項について実質的な
審議が行われるよう引き続き指導していく。

意思表明のページに戻る