訴 状
原告
岐阜県山県郡高富町西深瀬二〇八の一 寺町知正
岐阜県岐阜市福光西三の一三の三 原美智子
岐阜県可児市久々利三八八の六
加藤匡子
岐阜県可児郡御嵩町中一六六九の一〇一
美濃島愛子
岐阜県山県郡高富町西深瀬二〇八の一 寺町
緑
岐阜県岐阜市加納大黒町一の一四の三 新田幸子
岐阜県山県郡高富町西深瀬一四三三の二 川田登志子
被告
岐阜市薮田南二の一の一 岐阜県教育委員会
教育長 日比治男
事故報告書非公開処分取消請求事件
訴訟物の価格 金九五〇、〇〇〇円
貼用印紙額 金八、二〇〇円
予納郵券 金九、一五〇円
一九九九年八月二日
岐阜地方裁判所民事部御中
請 求 の 趣 旨
一 被告岐阜県教育委員会が原告に対して、一九九九年六月二五日付けでなした「平成一一年四月一日から平成一一年六月一五日までの岐阜県教育委員会に報告された公立小・中・高校に関する以下の文書 一、児童・生徒に係る事故報告書」の文書を公開しないとの処分決定(教学第五九三号)を取り消す。
二 被告岐阜県教育委員会が原告に対して、一九九九年六月二五日付けでなした「平成八年四月一日から平成一一年六月一五日までの岐阜県教育委員会に報告された公立の養護学校に関する以下の文書 一、児童・生徒に係る事故報告書」の文書を公開しないとの処分決定(教学第六一一号)を取り消す。
三 訴訟費用は、被告の負担とする。
との判決を求める。
請 求 の 原 因
第一 当事者
一 原告らは肩書地に居住する岐阜県民であり、本件各文書の公開請求を行った。
二 被告岐阜県教育委員会(以下、被告教育委員会という。)は、岐阜県情報公開条例(以下、本件条例という。)第二条第一項の実施機関であり、教育長は日比治男である。
第二 非公開処分の存在・その一
一 原告らは、一九九九年六月一六日付で公立学校の児童・生徒に係る事故報告書の公開請求を行った。
二 右請求に対し、被告教育委員会は、一九九九年六月二五日付けで、左記の理由で「平成一一年四月一日から平成一一年六月一五日までの岐阜県教育委員会に報告された公立小・中・高校に関する以下の文書 一、児童・生徒に係る事故報告書」の文書(以下、本件文書@という。)の全てを公開しないとの処分決定(教学第五九三号)(以下、本件処分@という。)を行った(甲第一号証)。
記
岐阜県情報公開条例第六条第一項第一号に該当
(理由)
公開の請求があった公文書は、個人に関する情報が記載された公文書であり、かつ記載されている内容は、児童・生徒の問題行動等に関するものである。当該問題行動等が心身の未熟な少年によって惹き起こされたものであり、少年の健全な育成を期すという少年保護の観点から、少年の将来も合わせて考慮すれば、当該公文書の内容は、岐阜県情報公開条例第六条第一項第一号にいう個人に関する情報であると解する。
第三 非公開処分の存在・その二
一 原告らは、一九九九年六月一六日付で公立養護学校の児童・生徒に係る事故報告書の公開請求を行った。
二 右請求に対し、被告教育委員会は、一九九九年六月二五日付けで、左記の理由で「平成八年四月一日から平成一一年六月一五日までの岐阜県教育委員会に報告された公立の養護学校に関する以下の文書 一、児童・生徒に係る事故報告書」の文書(以下、本件文書Aという。)の全てを公開しないとの処分決定(教学第六一一号)(以下、本件処分Aという。)を行った(甲第二号証)。
記
岐阜県情報公開条例第六条第一項第一号に該当
(理由)
公開の請求があった公文書は、個人に関する情報が記載された公文書であり、かつ記載されている内容は、児童・生徒の問題行動等に関するものである。当該問題行動等が心身の未熟な少年によって惹き起こされたものであり、少年の健全な育成を期すという少年保護の観点から、少年の将来も合わせて考慮すれば、当該公文書の内容は、岐阜県情報公開条例第六条第一項第一号にいう個人に関する情報であると解する。
第四 本件条例の主旨、目的、適用除外等と実施機関の立証責任
一 本件条例は、県政の実情などに対する県民の理解を深め、県政に対する県民の信頼を高めるために制定され、実施機関が管理する情報について公開を原則とし、非公開は例外である。条例の非公開事由該当性(適用除外事由)を、専ら行政機関の側の利便等を基準・根拠に、その主観的判断に基づいて決するとすれば、その範囲が不当に拡大する危険性があり、情報公開制度の実質的意味が失われることにもなりかねず、例外規定の解釈は厳格でなければならない。
二 実施機関は、処分をするに当たっては、条例を十分に検討して処分決定したのであるから、訴訟においても非公開事由該当性を直ちに明確かつ具体的に立証する責任がある。
第五 本件処分@の違法性
一 本件処分@に該当する文書件数は、小中学校七件、高校三件である。
二 本件条例第六条第一号への非該当性
第一号は、憲法第一三条が保障する個人のプライバシーの権利、即ち私生活をみだりに公開されない権利の保護を目的とするものであり、「個人に関する情報」であり、かつ「個人が識別できるもの」を非公開の対象としている。特定の個人が識別され、又は識別され得る情報であっても、その公開によって、個人のプライバシーの権利の侵害が生じない場合は、公開義務は免除されない。
本件公文書は、基本的に「個人情報」に該当せず、第一号に該当しない。
仮に、氏名、住所、生年月日等の記載があれば、部分公開とすれば足りる。岐阜県が作成した本件条例第六条第一号の解釈運用基準4《個人に関する情報が記録された公文書の一部公開の取扱い》では「氏名、住所等を削除することにより、特定の個人が識別され得ることがなく、かつ、請求の趣旨が損なわれないときは、当該公文書に記録されている氏名、住所等を削除したその他の部分について、公文書の部分公開をしなければならない」とされているのである。
本件事故報告書の個別の記載内容に関して、個人識別情報への該当性及びプライバシーの権利の侵害の有無、その程度の如何等を、各部分毎に逐一検討判断すべきところ、これらを何ら検討することなく一括して第一号該当として非公開とした本件処分は明らかに違法である。
また、学校教育あるいは少年に関するものであること等、「情報の性質」を理由に、条例に明記された非開示事由を特別に緩やかに判断し、当該情報の開示を拒否することは許されない。
実際に、教職員の事故報告書は公開され(甲第三号証)、教師の生徒に対する体罰報告書等も同様に公開されているのであるから、本件公文書だけを非公開とする合理的理由はない。
県健康福祉環境部所轄の諸施設における事故報告書及び対応記録は公開されている(甲第四号証)。
三 以上、本件文書の全てを一切公開しないとの処分は理由がなく違法であるので、取消されるべきである。
第六 本件処分Aの違法性
一 本件処分Aに該当する文書件数は、六件である。
二 本件条例第六条第一号への非該当性
本件公文書は、基本的には「個人情報」に該当しない。その他、右第五と同様で同様であって、第一号への該当性は認められない。
三 以上、本件文書を公開しないとの処分は、右第五と同様、理由がなく違法であるので、取消されるべきである。
第七 結び
岐阜県教育委員会がどのように事務事業を行っているかが正しく認識されるためには、これら公文書が公開されることが必要で、公開によって県民の県政への理解と信頼が高まることは明らかである。本件情報が公開されることは、本件条例の解釈、運用として正当なものである。
以 上
証 拠 方 法
甲第一号証 教育委員会の処分通知(教学第五九三号)
甲第二号証 教育委員会の処分通知(教学第六一一号)
甲第三号証 教職員に係る事故報告書の一部
甲第四号証 県健康福祉環境部所轄諸施設における事故報告書及び対応記録の一部
その他、口頭弁論において、随時、追加提出する。
添 付 資 料
一 訴状副本 一通
二 甲第一乃至四号証
岐阜県山県郡高富町西深瀬二〇八番地の一
原告 寺町知正 外六名
岐阜地方裁判所民事部御中