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  次回期日01年12月26日(水)3時00分〜
平成10年(行ウ)第4号    情報誌購読料支出金返還請求事件
                   原告   寺町知正  外8名
                   被告   梶原拓 外8名
    被告参加人  岐阜県知事 梶原拓

 文書提出命令申立−2
 2001年12月6日
 岐阜地方裁判所 民事2部 御中
                選定当事者   寺  町  知  正
             岐阜県山県郡高富町西深瀬208番地の1                 選定当事者   山  本  好  行
    岐阜県揖斐郡谷汲村岐礼1048の1
           民事訴訟法の文書提出命令に関する規定が改正されたので改めて申し立てる。

第1 文書の表示
1 岐阜県の『諸新聞』に対する支出のうち、広報課が取りまとめている1995年度、96年度分についての「支出負担行為兼支出金調書」及び添付の「証拠書類(請求書若しくは領収書)」。

2 前記1の文書に記載される当該出版物(各出版物ごとに各号1部)

第2 文書の趣旨
1 支出負担行為兼支出金調書は、岐阜県が『諸新聞』という出版物(いわゆる情報誌)に対する支出に関して、県が第三者との取引(契約)において行った財務会計行為について、地方自治法第232条の3《支出負担行為》、同4及び5《支出の方法》等に基づき定められた岐阜県会計規則第10条《支出負担行為の整理等》や同第38条《支出命令》に規定する「支出金調書」等において定められた文書である。
 そして、支出負担行為兼支出金調書に添付されている請求書は県会計規則第10条別表−1のとおり「支出負担行為に必要な書類」であり、添付されている領収書は規則第48条《資金前渡の精算》1項において「証拠書類を添え」とされているものである。
 さらに、請求書や領収書は、同規則第74条《証拠書類》2項「三 債権者の請求書、四 債権者の領収書」に定めるところの県の支出手続きを確定するために定められた文書であり、本件支出の事実を具体的に記載したものである。
 また、当該出版物には、発行年月日・号数と記事のほか、一般に、当該出版物の本来の頒布価格や発行間隔なども明示されている。

第3 文書の所持者
      (被告参加人) 岐阜県知事 梶原 拓  

第4 証明すべき事実
 支出負担行為兼支出金調書及び証拠書類においては、岐阜県の『諸新聞』に対する支出に関して、支出担当課名、支出額、執行年月日、発行物名、発行社(者)若しくは請求・受領者の名称並びに所在地を明らかにする。
 当該出版物においては、当該掲載記事の内容、ページ数、定価、発行間隔等を明らかにする。

第5 文書提出義務の原因
1 申立に係る文書(以下、本件文書という)は以下に述べるとおり、民事訴訟法第220条第4号を適用するに当たって除外すべき文書とされるイロハニホのいずれにも該当しないから、所持者である被告参加人岐阜県知事には第220条第4号によって本件文書の提出義務がある。

2 本件文書は民事訴訟法第220条第4号のイで規定する第196条及びハで規定する第197条、つまり証言拒否権に係る文書でなく、ホで規定する刑事事件記録等の文書でないからイハホにいう除外文書に該当しないのは明白である。
3 次ぎに、ロに該当しない理由を述べる。
 本件文書は岐阜県が情報誌紙に対して行った支出について、支出担当課名、支出額、執行年月日、発行物名、発行社(者)若しくは請求・受領者の名称並びに所在地等を記録しているだけである。
 情報誌紙は多数の者に配布してその対価を得ることを目的として作成され、被告参加人は記載される情報に着目して当該出版物を取得しているのが表向きの理由と考えられる。このように広く配布される出版物について、被告参加人の各部署がどういう情報誌紙を取得したか、幾ら支払ったか等は公務員の職務上の秘密には該当しない。
 また、単なる取得や支払いの記録であるから、前記情報が公務員以外に知れても公共の利益を害することは考えようがないし、公務の遂行に支障はない。少なくても「著しい」支障が生ずることはあり得ない。
 しかも、岐阜県は既に、当該情報誌紙等の取得を中止しているから、支障が生ずるおそれはない。
 よって、ロにいう除外文書に該当しない

4 続いて、ニに該当しない理由を述べる。
 ニは旧法の4号ハの自己使用文書である。「『自己使用文書は、内部文書ともいい、およそ外部の者に開示することを予定して作成されたものではない文書であって、日記帳や備忘録がその典型であろう』(田原睦夫「文書提出義務の範囲と不提出の効果」ジュリスト1098号64頁、竹下守夫「新民事訴訟法と証拠収集制度」法学教室196号18頁以下)、『一律に提出の対象から除かれると解することにはやや疑問があり、個別事情の解釈にゆだねざるをえないものもあり、その場合はさまざまなファクターを総合的に考慮して決することになろう』(伊藤眞「文書提出義務と自己使用文書の意義」法協114巻12号1444頁)」(別冊法学セミナー「基本法コンメンタール・新民事訴訟法2」197頁)といわれている。
 本件文書が自己使用文書に当たらないのは明白であるから、ロにいう除外文書に該当しない

第6 今回の民事訴訟法の一部を改正する法律案について
 民事訴訟法の一部を改正する法律案(01年3月13日提出)に係る政府の提案理由は「民事訴訟における証拠収集手続の一層の充実を図るため、公務員又は公務員であった者がその職務に関し保管し、又は所持する文書に係る文書提出命令について、私文書の場合においても提出義務が除外されている文書のほか、その提出により公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがある文書等を除いて、文書提出義務があるものとするとともに、除外された文書に該当するかどうかを裁判所が判断するものとし、その判断のための手続としていわゆるインカメラ手続を設ける等の措置を講ずる必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。」とされている。

第7 文書の必要性
 本件訴訟は、住民の税金を原資として事務事業を遂行する地方公共団体が、当該公金を用いて、いわゆるブラックジャーナルと云われるような出版物を多種、多数部、しかも高額な価格で取得することが許されるのか等を争うものである。 本件文書のうち「支出負担行為兼支出金調書」及び「証拠書類」は情報公開制度による公開においては、出版物名や相手方の名称及び所在地等の本件審理に必要不可欠な部分が非公開とされている。他方、被告らは、前記文書を所持していないから、本件訴訟に提出することはできない、としている。
 本件文書のうち「当該出版物」については、被告参加人は「諸新聞は情報公開条例の対象の公文書に該当しない」として一切公開していない。
 県の予算執行日は「支出負担行為兼支出金調書」にしか記録されていない。同一の「支出負担行為兼支出金調書」に複数の出版物が合算されている場合がある。本案においてどの出版物に幾ら支出したか、何部購入したかなどの支出の詳細を明らかにすることが、重要な段階になっているから本件文書が提出されることは、本件審理に不可欠である。
 本件に係る出版物は、市中に販売店あるいは代理店もなく、書店で販売されず、図書館にも配置・展示されていない。配布は、発行者若しくは販売者が直接役所の事務室等に持ち込む若しくは送付するものであるから、一般人が当該出版物を入手することは容易でない。
 このような事情の中で、出版物の幾つかについては原告が入手し得たものを訴訟に提出しているが、真に公費支出、県費支出に値するかの判断は、支出に対応する出版物に基づいて裁判所の判断を仰ぐのが最適かつ不可欠である。
 よって、本件文書はいずれも申立にかかる「証すべき事実」との関係で文書提出命令の必要性があるというべきである。

第8 結び
 本文書提出命令申立が認められないなら、審理が尽くされたとはいえない。民事訴訟における証拠の充実を図った法改正の趣旨に鑑み、裁判所の積極的な職権の発動を求めるものである。
                            以 上