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情報誌のまとめのページ

         訴     状   
             原  告    寺  町  知  正  外八名 

             被  告    梶  原  拓     外八名
    情報誌購読料支出金返還請求事件
          訴訟物の価格   金九五〇、〇〇〇円
          貼用印紙額      金八、二〇〇円
予納郵券 金二五、七九〇円

岐阜地方裁判所民事部御中
         請 求 の 趣 旨

一、被告らは、岐阜県に対し、連帯して、以下被告毎に示す金額及びそれに対する本訴訟送達の日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。
 被告梶原拓は金一五四万円を、被告下野博司は金一五四万円を、被告関勝美は金一五四万円を、被告松野弘は金三三万九千円を、被告松野善武は金十二万八千円を、被告高木勉は金十万五千円を、被告川嶋香列は金五万五千円を、被告長屋栄は金一万五千円を、被告池場徳之は金五千円。
二、訴訟費用は、被告の負担とする。
 との判決、ならびに第一項につき仮執行宣言を求める。

         請 求 の 原 因
第一 当事者
(一)原告は肩書地に居住する住民である。
(二)被告梶原拓は一九八九年施行の岐阜県知事選挙において当選し、一九九三年、一九九七年と再選され、以降もその職にあるものである。
(三)被告下野博司は、一九九六年度岐阜県出納事務局出納課長の職にあった。
(四)被告関勝美は、一九九六年度岐阜県総務部広報課長の職にあった。
(五)被告松野弘は、一九九五年度岐阜県出納事務局出納課長、一九九六年度岐阜県土木部監理課長の職にあった。
(六)被告松野善武は、一九九六年度岐阜県林政部林政課長の職にあった。
(七)被告高木勉は、一九九六年度岐阜県農政部農政企画課長の職にあった。
(八)被告川嶋香列は、一九九六年度岐阜県衛生環境部医務課長の職にあった。
(九)被告長屋栄は、一九九六年度岐阜県総務部秘書課長の職にあった。
(十)被告池場徳之は、一九九五、九六年度岐阜県監査委員事務局監査第一課長の職にあった。

第二 本件支出の概要 
(一)原告らは、岐阜県の情報公開の制度に則って、「九五年九六年の二年間に、岐阜県が『諸新聞』に対して支出した、全ての購読料に関する文書」等を公開請求した。これを受けて、岐阜県から「請求書」「支出金調書」などが公開された。
 これを集計すると、岐阜県は、「いわゆる情報誌」を三十誌(『三十誌』という数は、岐阜県広報課の発表による数である)の購読料として、九五年度四五課で一六三万五千円、九六年度四八課で一五四万円、合計五二課、三一七万五千円を支出していた。

(二)九五年九六年の二年間の「請求書」(六三七枚)を記載の金額別にみると、六三一枚が五千円で、四枚が四千円、二枚が三千円である。
  一方、情報誌発行者への口座振り込みの金額と件数は、三万円四件、二万円七件、一万五千円五件、一万円六六件、九千円二件、五千円四二八件、四千円四件、三千円二件である。

(三)請求日は、特定の日に集中している。

(四)購読料支出の多い課は、九五年九六年の二年間の合計で見ると、監理課六八万四千円、林政課二六万六千円、農政企画課二五万五千円、農地計画課一四万八千円、農業技術課一二万五千円、健康増進課一一万五千円の順である。監査委員事務局第一課までも購読料を支払っている。
    本件被告に関連する支出をみると以下のようである。(単位千円)

       監理課   林政課   農政企画課   医務課   秘書課   監査委員第一課
  95年  345  138   150 350  0 10
  96年  339   128  105 550   15 5
  合 計 684  266   255 900  15 15
(五)本件全ての支出は「岐阜県作成の一定様式の請求書」である。

(六)本件訴訟に先立つ監査請求においても、岐阜県監査委員が事実調査の結果として、「平成八年十二月十八日〜年度末の購読課、金額、支払日などについて、請求人の事実証明書と一致した」としている。以上から、その余についても、原告集計の金額、件数の通りの支出があったのは間違いない。

第三 本件支出の違法性
(一)県費で取得するに値しない物品への支出は当然に違法
   本件情報誌に関して、以下の理由から、公費で取得する必要性はなく、不要な物品の購入は県に損害をもたらすだけであって、違法な支出と言うべきである。
 1 購読各課の事務事業の内容と記事の内容には合理的、必然的な関連は何らない。公務の遂行にとって、公費での購読は不必要である。
 2 暴力団対策法施行後、岐阜県警などは自治体などに、暴力団の資金源になる恐れがあるとして、不必要な情報誌との絶縁を求めている。これらからも、情報誌に対する購読料支払いは著しく不当なことである。
 3 県や市町村が財政問題に非常に苦慮している中で、県が多額の支出をしていることから、未だに、購読撤廃に踏み切れない市町村(「交際費」名目での支出もある)も多く、県の責任は大きい。
 4 経済界においても、一連の総会屋の情報誌を購読していた企業の姿勢が重大な社会問題になっており、関与していた経営者、関係者らの責任が問われている。社会通念上購読料支払いが許容される余地はない。
 5 本件情報誌は、例えばページ当単価で比較すると、日刊紙の数百倍であり、非常に高価な取得物である。しかし、県は公文書公開審査会への弁明書において「随時廃棄している」としているが、これは、必要性が乏しいからこそである。必要性があるとするなら、「随時廃棄」自体が違法行為である。

(二)岐阜県会計規則に違反
 1 岐阜県会計規則(以下、規則という)は、「購入」に当たっては七四条二項「債権者の請求書、領収書などの証拠書類を添付する」とされている。しかし、本件「請求書」は、岐阜県職員が作成したものである。
 2 規則第七七条は「原本に限る」とされているが、右記の理由で、債権者の作成した「原本」ではない。
 3 規則第七六条は「金額、数量の訂正ができない」としている。
   左記に述べるように、請求書を合算したり、請求日が特異的に集中しているなど、修正の可能性が極めて高い。
 4 原告らは九六昨年十一月、岐阜県等に対して「購読料の支出をやめるべき」と強く要望した。この際、購読の実態について広報課職員から聴取したところ、支出手続きに関して、『岐阜県広報課職員が記入して、各課に配布することで請求とし、その後、各課それぞれ振り込む』とのことであった。この請求書は、当時、全て金額まで印刷されていた。  このような実態に、当時、原告らが例えば「請求書を県が印刷、記入するなど、絶対許されない」と強く求めたところ、九六昨年十二月以降の支出に関しては、金額を手書きにしたものが多くなったという経過がある。
 5 合算(次項3で述べる)に使った請求書の筆跡が明らかに相違していることからも、原本ではないことは明らかである。県職員が適当に組み合わせている、と考えるのが合理的である。
 6 一般に文書類の作成や取得を証するためには、当該写し等を一部添付するのは当然であるところ、すべての支出行為兼支出金調書について一切添付されていない。

(三) 購読料支出の実態と異なる虚偽の請求=手続的な違法
 1 各種情報誌の発行日も購読料システムも、まちまちである。
    しかし、本件請求書記載の「請求日」をみると、
  九五年は八月一日、十五日、十二月十二日だけで、当年全体の支出額の七五%
  九六年は八月二〇日、十二月二七日だけで、当年全体の支出額の七八%と、年間の「極めて限定された日」に集中している。
   過去に、岐阜県が各発行者に対して、「請求を集中するように」という指導をしたとか、「支払い日を集約する」という通知あるいは表明したことはなく、この集中は極めて不自然である。
 2 各種情報誌の購読料システムからして、本件購読料支出の大部分が「五千円」(支出件数の九九%)というのは、極めて不自然である。
 3 前項で述べたように、請求書を合算して請求する手法、例えば「五千円」の請求書を「六枚併せ」て「合計三万円」一件の支出行為として「請求する」という方法は、行政機関の支出方法としても、民間の支出方法としても、どこにもない、全く異常な「会計行為」である。
 4 同一課の支出状況を比較しても支出日、購読数、支出金額が極めて不自然である。
 5 県の情報誌購読料支出は、各情報誌の購読料システムの実際とは完全に乖離した、虚偽の請求と考えるのが合理的である。

(四) 本件公費支出の構造的な違法
 1 九五年十一月、請求人らが県に対して、情報誌購読の悪影響を提起、中止を求めたことの報道記事等をみて、総務部在籍の県職員とする者から『実際の県の購読料支出は、それより一桁多い。出先機関でも多い。ウラ金から出す。県が行う事業で、地域でトラブルなどがあると、県に有利になるような記事を書くよう依頼するものも、幾つかある』との告発があった。
 2 長年、各課(あるいは県職員ら)と情報誌(あるいは発行者ら)と、「切れない」関係があるからこそ本件支出が継続して行われている。記事に書かれたり、号外を出されることを恐れて、購読料支出をやめられない、との意見もある。
 3 県が広告を出している情報誌すらある。
 4 岐阜県の購読料の認識は、「ウラ金から出す分」と「手続を経て公式に支出される分」と、実体的に区別が無いような状態であると考えるのが、合理的である。であるからこそ、適当に各課から支出しているような状態を演出するものとして、本件支出手続きが偽装された、というべきである。
   実際の支出からみれば、「公文書として記録された支出」は氷山の一角というべきである。
 5 以上、ウラ金支出の実態解明なしには、情報誌購読料支出の全容は明らかとならない。

(五) 地方自治法及び地方財政法に違反
 1 地方自治法第二条一三項は、地方公共団体の事務処理の原則について「地方公共団体は、その事務を処理するに当たつては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最小の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない」と定めている。これは地方公共団体が住民の付託を受けて住民の税金により、その事務の執行を行っていることから当然の規定である。
 2 地方財政法第四条は、地方公共団体の予算の執行について「地方公共団体の経費は、その目的を達成するための必要且つ最小の限度をこえて、これを支出してはならない」と定めている。これは地方公共団体が住民の付託を受けて住民の税金により、その事務の執行を行っていることから当然の規定である。
 3 県が購読している情報誌に、岐阜県行政の事務事業執行に当たって必要不可欠な情報があるとはいえず、購読しないからとて執行に支障は無い。本件購読料支出は、「経費を最小」とするための検討が何らなされず漫然と、執行されてきた。
 4 本件支出が、各方面(行政内部を含めて)から批判を浴びながらも、惰性的に執行されてきたことは明らかである。情報誌への購読料支出は県議会関係者においても、苦慮している問題である。
 5 以上のように、本件支出は「最小の経費で最大の効果を挙げるようにされておらず」地方自治法第二条一三項に違反している。
    また、本件支出は「必要且つ最小の限度をこえている」ことは明らかで、地方財政法第四条に違反している。

第四 住民監査請求
(一)原告らは一九九七年十二月十七日、岐阜県監査委員に対し、地方自治法第二四二条第一項の規定により、岐阜県知事の職員措置請求を行った(甲第一号証)。その趣旨は
   『岐阜県は、情報誌三十誌の購読料として、九五、六年度五二課で三一七万五千円を支出した。情報誌は県費で取得するに値しない。県職員より「実際の県の購読料支出は、それより一桁多い。出先機関でも多い。ウラ金から出す」との内部告発があった。支出は、実態と異なる虚偽の請求でなされたもので、岐阜県会計規則等にも違反し、信義則に反する著しく不当な行為で、社会通念上も許容されない。』
   というものである。

(二)これに対して、岐阜県監査委員は、一九九八年二月十二日付けで原告らの右監査請求を却下、棄却とした(甲第二号証)。その要旨は、
   『平成八年十二月十七日以前の支出分に対する請求は却下する。平成八年十二月十八日以降の支出は、請求人の主張に一致し、六十九万九千円であった。請求書はいずれも業者から出された書類で、岐阜県会計例規の要件を備えている。請求日の集中は業者側の事由と思われる。情報収集の一環として、参考にしていた。県からの掲載依頼又は広告料支出の事実はない。以上、請求は理由がなく棄却する。』
   というものである。

(三)原告らは二月十三日に監査の結果通知を郵送にて受け取った。しかし、右監査請求の結果は、以下の理由により承服できない。
 1 本件購読料は、歴史的経過故に支出が継続されていることは明らかであり、平成八年十二月十七日以前の分についても、監査、調査を実施し、判断すべきである。また、経年評価の中でこそ、本件支出の適否が判断できる。以上、却下の判断は誤っている。
 2 県費で購読するに値するかどうか、各課事務事業との関連の有無、各課においてそれぞれ購読する誌を特定し、決定する過程に合理的必要性があったか等について、具体的に何ら調査、検証あるいは比較考量していない監査には、重大な瑕疵がある。
 3 県職員よりの内部告発「実際の購読料支出は、一桁多い。出先機関でも多い。ウラ金から出す。」などの点について、何ら調査、判断をしていない監査には、重大な瑕疵がある。

(四)よって、先に述べたような違法もしくは著しく不当な予算支出への異議申し立てを却下、棄却することは、納税者に違法もしくは不当な公金の支出を監視する権利を与えた住民監査請求の基本理念を否定することにほかならない。今回の決定は、監査委員の職務を自ら放棄し、監査制度を自ら否定するものであり、法律の解釈を誤ったこのような違法もしくは著しく不当な監査の結果は受け入れられるものではない。岐阜県の監査制度を適正化するためにも、本件「監査結果」をこのまま放置すべきでない。

第五 被告らの本件財務会計行為に関する賠償責任
(一)各被告は、以下各号各被告毎に示す金額について、対応する金員を返還する責任がある。よって、原告は、地方自治法第二四二条の二第一項四号に基づき、岐阜県に代位して、損害の賠償を請求する。

(二)被告梶原拓は、一九九六年度、「いわゆる情報誌」の購読料として、総額金一五四万円を岐阜県の公金から違法に支出したことについて、岐阜県知事としての責任を有する。

(三)被告下野博司は出納事務局出納課長として、岐阜県全体の支出行為の適否に対して、監督権限を有している。九六年度の本件情報誌の購読料総額金一五四万円ついても、支出を日常的に承知しながら、権限として支出の承認をなしたもので、この全額の支出に責任を有する。

(四)近年の岐阜県の情報誌の購読料支出は、広報課を窓口としてなされ、広報課から県庁内各課に購読料が割り振られている。よって、被告被告関勝美は広報課長として、岐阜県の情報誌の購読料支出の内訳及び金額の全ての決定、割り振りに関して権限を有し、かつこの権限を行使した。よって、九六年度の本件情報誌の購読料総額金一五四万円の支出に責任を有する。

(五)被告松野弘は、監理課長として、九六年度の当該課に関する情報誌の購読料支出総額金三三万九千円の内容及び金額の全てを決定する権限を有している。そして決済をなした。よって、金三三万九千円全額の支出に責任を有する。

(六)被告松野善武は、林政課長として、九六年度の当該課に関する情報誌の購読料支出総額金十二万八千円の内容及び金額の全てを決定する権限を有している。そして決済をなした。よって、金十二万八千円全額の支出に責任を有する。

(七)被告高木勉は、農政企画課長として、九六年度の当該課に関する情報誌の購読料支出総額金十万五千円の内容及び金額の全てを決定する権限を有している。そして決済をなした。よって金十万五千円の支出に責任を有する。

(八)被告川嶋香列は、医務課長として、九六年度の当該課に関する情報誌の購読料支出総額金五万五千円の内容及び金額の全てを決定する権限を有している。そして決済をなした。よって金五万五千円の支出に責任を有する。

(九)被告長屋栄は、秘書課長として、九六年度の当該課に関する情報誌の購読料支出総額金一万五千円の内容及び金額の全てを決定する権限を有している。そして決済をなした。よって、金一万五千円の支出に責任を有する。

(一〇)、被告池場徳之は、監査委員事務局監査第一課長として、九六年度の当該課に関する情報誌の購読料支出総額金五千円の内容及び金額の全てを決定する権限を有している。そして決済をなした。よって、金五千円の支出に責任を有する。

第六 結論
    本件「購読料支出」の継続は、全庁的な政策的判断の下にたつことは明らかである。本件訴訟は、単なる「出版物の購読」の是非だけを問うているのでなく、公金支出に対する公務員の基本姿勢をも問うものである。
    本件支出は、実態と異なる虚偽の請求でなされたもので、会計規則等に違反し、信義則に反する著しく不当な行為で、社会通念上も許容されない。違法もしくは著しく不当なものといわざるを得ない。実際の支出が一桁多く、本件に示す金額が氷山の一角であるなら、決して許されないことである。このまま放置すれば、今後も「購読」及び「違法支出」が継続される可能性が極めて高い。よって、違法に支出された一五四万円は、直ちに返還されるべきである。
   原告の請求を斥けた監査委員の決定には承服できないので、出訴に及んだ。

 《証 拠 方 法》       口頭弁論において、随時、追加提出する。
一九九八年三月五日
          岐阜県山県郡高富町西深瀬二〇八番地の一
             右  原  告     寺  町  知  正 外八名
岐阜地方裁判所民事部御中
当事者目録《被告》
          岐阜県岐阜市御手洗三九〇の二〇
被  告     梶  原  拓
岐阜県安八郡墨俣町上宿三七七
被  告     下  野  博  司
岐阜県岐阜市安食志良古二六の一五六
被  告     関  勝  美
岐阜県山県郡高富町高富一五一二の四
被  告     松  野  弘
岐阜県加茂郡川辺町石神八七の一
被  告     松  野  善  武
岐阜県美濃加茂市大手町一の三六の一
被  告     高  木  勉
岐阜県各務原市那加雄飛ケ丘町九の二
被  告     川  嶋  香  列 岐阜県岐阜市鷺山二五六三の一八
被  告     長  屋  栄
岐阜県大垣市入方二の一六二
被  告     池  場  徳  之
以 上

      情報誌購読料支出金返還請求事件

            証拠説明書

              原  告     寺  町  知  正  外八名               被  告     梶  原  拓    外八名

一九九八年三月五日

          岐阜県山県郡高富町西深瀬二〇八番地の一
             右  原  告     寺  町  知  正 外八名 
岐阜地方裁判所民事部御中

             記

甲第一号証 住民監査請求書及び補充書
原告が地方自治法の定めにより、住民監査請求を経て提訴に及んでいること、及び請求内容の全容を示す。

甲第二号証 監査結果通知書
    岐阜県監査委員が、原告らの請求に基づいて監査を行い、その結果として、請求を「却下、棄却」したことを通知してきたこと及びその監査報告を示す。
                                   以 上