『む・しの音通信』No.45
2005年2月22日

《0(ゼロ)からはじめる勉強会》特集

勉強会報告  
  勉強会プロジェクトスタッフ・呉羽真弓

 今回は、担当初挑戦の3人による「0(ゼロ)からはじめる勉強会」〜私たちが知りたいことを私たちでつくる〜勉強会。日程も1日とし、テーマは『予算』。1期目の議員であり、予算審議を1度経験したことのある私たちが、今、習得したい課題として選んだテーマ。
 1月29日、会場はウィルあいち。参加者は、議員11名(会員外のお試し参加の方が2名)。初参加の方も含め参加への思いを1分間スピーチすることから始めた。
 《セッション@》は「予算の基本について学ぶ」。講師は「む・しネット」の会員でもあり2期目の議員、今大地はるみさん。「予算とは何か」に始まり、予算編成の流れ、予算の原則、予算書の様式などを『予算の見方・つくり方』『議員必携』を活用しながらていねいに説明していただいた。また、各課からの予算要求書を見て予算書の中身がよく理解できたという今大地さんご自身の経験なども聞くことができた。細かな基本の重要性が再確認できた。
 《セッションA》は「予算審議に際しての実践的な手法を学ぶ」。講師は寺町ともまささん。行政の施策の執行を監視するのが議員の務めであるという観点から、「予算審議の着眼点」を学んだ。簡潔にまとめ上げられたレジュメにそって、『地方自治法』や『予算の見方・つくり方』で該当箇所を確認しながら進められた。予算書を読み解くためにも、詳しい人に聞くヒアリングの大切さを学び、予算審議に向けて議員の力をフルに発揮する手段の数々・自治体財政のチェックポイントを学んだ。また、予算書に見える具体的な項目ごとの視点について、解説していただき2時間30分が過ぎた。
 《セッションB》のテーマは、「議会での予算審議に関する悩み話しませんか」。セッション@とAを受け、参加者の悩み、感想、意見を2分で話すことから始めた。
 一巡したあと、コーディネーターの今大地さんの進行で、参加者それぞれが自由に意見交換をした後、コメンテーターの寺町ともまささんによる的確な解説&アドバイス。各自が直面している課題を表面化し、他の参加者と共通理解・意見交換、その上講師の解説まで手に入れることができた。
 《セッションB》は、前の講座の未消化な部分をなくすために設けた初めての形態であ
った。セッション@、Aにおいて積み残した部分を質問し、勉強会全体としての理解を深めるためのゆとりを持ったセッション。先を歩く2期目の議員の正確な知識に刺激を受けると共に、失敗も含めた経験談を聞くことで親近感まで感じられた。
 1日のみの勉強会を完結させ、各自の活動へと繋げる原動力になったと確信している。

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予算の基本〜予算とは何か
   長野県穂高町・小林純子


 一年前の勉強会で「予算は自治体行政の設計書・青写真」と聞いたとき、予算書の膨大な数字の羅列が違うものに見えてくるのを感じた。そうか、数字は予算額を表しているだけではなく、どんな政策のもとにどんな事業を計画しているのかも見せているのだ、と。その後、私にとって初めての予算審議には、「これぞ議員の大事な仕事」という自覚を持って臨むことができた。
 予算を課題としての2度目の今回は、まず《セッション@》で、自治体の予算編成方針に始まって、予算編成の一連の作業の過程と手続きの流れや、予算の様式など基本的なことから入り、議員としてどのタイミングで予算編成に関わり、よりよい政策の実現につなげていくかまでを学んだ。
 基本といえば、「予算編成の権限、提案の権限は市町村長にあり」(自治法119条、211条)、「予算の議決権は議会のみが有する」(自治法96条)というのだが、今日の学びの中からは、議会に予算の提案権がないのはなぜ?と疑問がわいた。
 疑問といえばもう一つ、予算の議決権は議会にあるとしながら、「款(かん)・項(こう)で議決する」と制限があること。款・項というのは予算書の科目のことで、上位にあたる項目。その下に「目(もく)、節(せつ)」と順次細かく区分されるが、款・項の大枠のところでは、実は政策の内容や事業の計画など読み取りようがないのだ。
 参加者からは「議決は款・項まで。目・節まで質疑する必要はないという職員もいて予算審議が深まらない」という悩みも。これに対しては、「議員は『目・節』の細部までチェックしながら予算審議をしているのであり、『款・項・目・節』は不可分だということを強く主張すべきだ」という意見で一致。
 予算案にオスミツキを与えるだけの議員ではダメ、議員としての力をフルに発揮するためには、予算書が手渡される前に為すべきこと=現在の政策や事業の評価、新たな政策提案、予算に関する調査やヒヤリングなどが重要であることを再確認した。

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「予算」の予習―きほんのき
     岐阜県瑞穂市・熊谷祐子


 この3月議会は議員になって初めての予算議会です。「予算の議決」は「条例の議決」とならぶ議員の大きな仕事です。
 昨年の12月議会で「決算の認定」を体験し、一市民であった時に抱いた市政に対するさまざまな疑問や不満のほとんどは、税金の使いかたのおかしさからくるのであり、それはそもそも予算編成に出ているのだ、ということがハッキリとみえてきました。
 《セッション@》では「予算のつくり方」を、【予算の概要】「@予算とは行政の政策をお金で表わしたもの」、A「予算編成の流れ」などで学び、また予算の読み方に必要な知識を【予算の様式】で学びました。
 この中で私にとって新鮮だったのは「予算編成の流れ」でした。「予算編成は10月にはいって市町村長が各部に『予算編成の基本方針』を通達するところから始まる」。しかし、「トップダウンというわけではなく、各課の積み上げ方式で決まってゆく」。「11月/各課の予算請求、部局内調整、ヒアリング→1月/復活要求→2月/首長査定→3月/議会提案」となるわけです。
 今まで予算が作られる流れがまったく見えていませんでした。これを知り、また今年実際に市役所の部課長の動きを目の当たりにして、初めて、予算というものを誰がいつどうやってつくっているのか分かり、予算が単なる数字の羅列ではなく、人体に通っている血管のごとく身近に感じることができました。
 初めての予算審議の前にまず「『予算編成の基本方針』をもらってきて読んでおくこと」。そして、私のまちは出生率が岐阜県内1位で、04年度財政力指数が0.807もあるのになぜ学童保育も児童館もないのか、いったいお金はどこにどう使われているのか、今年の予算書で当たってみよう。さらに、次年度「次世代育成支援行動計画」が始まるのだから、新年度予算案では、それがどのように具体化されているのか、しっかりと焦点を当てて見ようと思います。 

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予算審議の鍵はヒアリング
    埼玉県越生町・田島公子


 今回の勉強会は予算審議の攻略法を体得し、政策的な観点から質疑をできるレベルになることが目的だ。
 《セッションA》の「予算審議の着眼点」で、予算書ができるまでの流れを追い、意外と早い時期から進められていることを知る。
 ヒアリングには、「款・項・目・節」のうち、少なくとも「目」ひとつ、「節」すべてを聞いてくることが力になるという。「予算書には説明を付す」ことになっているが、これが分かりやすくないから、予算書を読み解くレベルを低くし、予算審議も議論が深まらない。テキストの『予算の見方・つくり方』(学陽書房)には非常に分かりやすい例があ
った。このようなものであれば新人議員でもどの事業にどのくらいの費用をかけるかが分かり、その政策の是非を考えることができる。説明書を変えていくことが今後必要だ。
 予算案審議には議員の力をフルに発揮しようということ。予算審議にも「本会議方式」「委員会付託」「特別委員会方式」その他、といろいろな形式があり、一長一短があることを知った。
 予算の調整は首長の権限だが、議会が議決してはじめて予算の執行ができるわけだから議会の責任は重い。議会が与党多数で、充実した審議なしに可決してしまったら、その責任は誰が負うのだろう。ツケは現在と将来の市民にいくことは間違いない。
 数が少ないから採決で対抗できなくても、「住民監査請求」や「住民訴訟」の方法があり、日本の住民訴訟の半分は議員が提訴しているものだという。通る率は低くても、出すことにより確実に行政の法令遵守は進むという。議員は市民より情報を得やすい立場にあり、おかしいと知った者が行動を起こすべきなのだ。目の付け所となる、違法・不当の具体例も提示された。起債・債務負担行為も分かりにくいが重要なことだ。
 6月議会が政策提言の時期ということで、今後の一般質問を通じ実現していきたい。

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勉強会 《セッション2》を受けて
     岐阜県可児市・山根一男


 《セッションA》は、7ページに渡るレジュメに沿って、寺町とまさささんを講師として進められた。「予算審議の着眼点」という3月の予算議会を目前に控えている議員にとっては、きわめて実質的な課題をテーマとしたセッションであった。
 自治体での「予算編成の流れ」や「自治体財政のチェックの方法」など基本的なことを押さえつつ、担当課へのヒアリングのコツや、参考になる書籍など、具体的なアドバイスをたくさんいただいた。
 私としては「委託料」のチェック方法について関心があった。入札の妨げになるということから、予算書に金額も明示されず、透明な部分が多いと感じるからだ。特に、私が問題を感じているコンサル会社への委託料についてはそれが妥当かどうかの判断が難しい。やはり関心のある分野については、しっかりとヒアリングをおこなってゆくしかない。入札にあたって著しく随意契約が多くないかもチェックしてゆく必要がある。当年度の予算書や、前年度の決算書と対比しながら、地道に検証してゆくことだと理解できた。
 このほかにも、予算チェックのポイントとして、前納報奨金や旅費、食糧費、交際費等の問題点。分担金や費用弁償や報酬・給与について条例が整備されているかどうか、など具体的に教えていただいた。巨額の予算を必要とする下水道事業に関しては、チェックの厳しい議員がいる町とそうでない町では、工事業者の見積もりに違いが出てくるということを聞き、純粋におどろいた。
 議員としてしっかりと目を見開いて、予算をチェックすることは、市民の財産を守り、有効に活用してゆくことそのものなのだ、という認識をあらためて持った。さっそく、明日からでも具体的に動いてみたくなった。          

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的確なアドバイスでやる気いっぱい!
    福井県武生市・安立さとみ


 《セッションB》のテーマは「予算審議に関する悩み」。内容は、セッション@とAで予算を勉強したうえで、沸きあがってきた思い、疑問、悩みを一人ずつ出し合い、各課題に参加者が各々の自治体の状況等を発言し、その上でコメンテーターにアドバイスをもらうというかたちで進められた。前セッションの講師が継続して担当することで、スムーズに話し合いが持たれ参加者が満足のいく、意義あるセッションであったと思う。
 予算ヒヤリングで生じた疑問をどう扱うかの質問では、「事例によって使い分けるのが良い」とアドバイスをもらう。疑問を投げかけ事前に解決することもいいが、「本会議まで『バクダン』としてとっておく」、これはぜひ実行したいものだ。
 予算書に限りなく現れる「委託料」に関しての質問では、《セッションA》の勉強を具体的にどのように活用するかアドバイスを受ける形になったが、基本は、「必要な場合は情報公開請求などもしながら的を絞って質疑をすること」「一般質問にからめていくのが有効な方法」、と助言を受けた。
 また、どこの自治体でも問題の多い「補助金」に関しての質問では、他市の情報や法律を基に話が進められたが、最後に「民間人が委員となって自治体全体の補助金を見直す委員会を開いては」とアドバイスを受けた。これには何だか自分の自治体でもできそうで、期待に胸がふくらむ。
 テーマは「予算審議に関する悩み」であったが、予算審議から外れ、現在抱えている議会活動での悩みや、議会運営に関する質問、議員の基本に関する質問と多岐に渡った。
 各参加者から思い思いに出される質問に、コメンテーターである「ともまささん」が、行政実例や過去の判例を取り上げながら、的確に回答を出してくださったことで、《セッションB》は、参加者が「私でもできそう」「やってみよう」のやる気を一杯もらった。

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「勉強会」の今後のあり方
     運営スタッフ・小川まみ


 1月29日に「議員と市民の勉強会」が終わって、翌30日午前に、今大地さんも含めて勉強会に参加した議員会員で、「議員と市民の勉強会」を今後どうしていくのかを話し合った。
 99年統一選後に自主勉強会としてスタートし、「む・しネット」発足後、「議員と市民の勉強会」として5年目。03年統一選後に新メンバーが増えたにもかかわらず、同じスタイルで継続してきた。今回の勉強会のテーマを「0(ゼロ)からはじめる勉強会」としたのも、一度原点に戻って考え直そうということからであった。
 参加者からは、「議員としての実力を身に着けたいので、勉強会は続けたい」「議員の交流会は他にもあるが、実践的な勉強ができるのはここだけ」という意見が多数だった。
 また、今回担当したプロジェクトスタッフが、何が大変だったのかは、「企画をつくること」「参加者に勉強したいことをリクエストしても反応がなかった」「アドバイスの体制がない」だった。
 担当者の負担にならず継続するには、どのようなやり方がよいのかについて話し合い、次のようにしていこうということになった。
 
◆年4回開催する。
 ◆担当は持ち回りで、全員が年1回はする。
 ◆参加者も主体的に関わる。
 ◆担当者の経費として1万円支払う。
 ◆収入より支出が上回った場合、不足分は参加者で割り、徴収する。

 私は勉強会スタッフ経験者として、反省しなければならないことが2つあると感じた。 まず、「む・しネット」の運営上の基本である「平場の関係」「やりたい人がやる」とは実際にはどうすることなのか、が会員の共通の理解になっていなかったこと。
 次に、「勉強会に主体的に参加する」とは、どのようなことなのかが参加者に十分伝えきれていなかったことである。
 先を行く人から次の人へ、経験を伝えていく仕組みを作る必要性を痛切に感じた。今後の課題である。

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「だれが議会を変えるのか?
  −ひとりからはじめる
       寺町みどり

『地方自治職員研修』2005.2月号
(発行/公職研03-3230-3703)より転載

※本文は、別に掲載しています。
 タイトルをクリックしてください。


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インフォメーション
−最新刊 紹介−
『老いる準備 介護することされること』
上野千鶴子著/学陽書房/1680円


わたしの人生は下り坂である。
人生は死ぬまで成長、生涯現役というかけ声に、わたしは与しない。
そんな強迫に鞭打たれて駆けつづける人生を、
自分にも他人にも、強要したくない。
老いるという経験は、
昨日できたことが今日できなくなり、
今日できることは明日できなくなる、
という確実な衰えの経験であることは、
50歳の坂を越えてみれば、
骨身に沁みる。
だが、それにしても、
かつて味わったことのないこの変化は、
新しい経験にはちがいない。
それなら新鮮な思いでこの経験を味わい、
自分の新しい現実をありのままに受け容れたい。
・・・・・・『老いる準備』。
タイトルはすんなり決まった。
新しい経験が始まる。わくわくするではないか。
さからわず、気負わず、
人生の秋を味わいつくしたい。(あとがきより)


《編集後記》


 6人の執筆者への原稿依頼でスタートした「む・しの音通信」編集。初体験の私の失敗が次の方への参考になるとの思いでの編集後記。原稿依頼の時点で、ある程度の全体のイメージをもって個別依頼することが必要。執筆者への的確な依頼が編集作 業に大きく影響するから。勉強会参加者以外の人が読んで内容がわかることをいつも 念頭に編集作業すること。「慣れれば適切な言葉も見つかりますよ」との事務局の言葉に、実力以上の役割を終え、ホットして この後記が一番遅れた。 (くれは)
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昨年9月から、プロジェクトスタッフに通信への「報告記事」の編集もお願いしている。この間じっさいに何人かと組んでみて、「問いを立てる」「ひととの調整」 「基本を応用すること」が苦手ということがわかった。勉強会から続く通信の編集は、「事業の企画〜準備〜実行〜評価〜事後報告」という一連の仕事が、議員の仕事である「政策の立案・実行・評価 」と同じ流れをたどる。
読者になにを伝えたいかは、 勉強会と一連のもので、どんな企画を立てたか、と無関係ではない。アタマでわかっているつもりでも、経験してみると思いどうりにならないことも多いし、最後になって、あの時こうしておけばよかったと気づくこともある。「つぎはもっとうまくできるかな」と思うか、「もう二度とやりたくない」と思うかはその人次第。わたしは、何ごとも失敗から学ぶことのほうが多いと思うのだけど・・・・
ノウハウを伝達してひとを育てるってむずかしい。
(みどり)

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