オンブズのページに戻る
トップページに戻る
 山県市ごみ処理施設計画事業費一部差止住民監査請求書
       (山県市職員措置請求書)
第1 請求の要旨
1. 概要
 市民生活のゴミ処理をする新たな施設を造ることについて、市が進めている市単独の計画ではなく、現在と同様に岐阜市との広域処理(岐阜市域の1/3位+山県市)の方がはるかに経済的で合理的である。
 山県市は、「岐阜市と一緒に組むと用地を山県市内で出すよう求められるし、地元の同意を得るのが大変だから単独がいい」、という考えである。
 事業費は、単独処理なら81億円、広域処理なら49億円と試算される。

2. 経費の概算の基礎
 2003(H15)年7月に山県市が「ごみ処理施設整備基本構想策定業務」としてコンサルタントに委託した報告書(第1号証)及び2005年9月並びに12月議会の市の答弁から概略を整理すると次のようである。

・広域処理とは、「岐阜市と広域処理で山県市内の新敷地に建設(含用地費)」。
        → 焼却施設規模は100トン炉×2基
・単独処理とは、「山県市が美山地内の昔からの敷地内に建設」。
        → 焼却施設規模は20トン炉×2基
・施設建設費は、広域は新たな用地費を含み、単独は既設として所有地あり。
・施設の使用期間は、山県市の見込む20年間で想定。維持費には人件費含。

             (基礎データの比較)
      施設建設費  20年間の維持費   合計    運搬経費    
 広域処理  20億     29億     49億     基本
 単独処理  28億     53億     81億    プラス2億
 
・単独は広域より建設費で30%高く維持費で80%高い。合計で60%高。
・1年当たりの経費(含人件費)は、広域は毎年2.4億円単独は毎年4億円。
・運搬経費とは、各収集地点から処理場まで運ぶ費用の試算であり、広域処理の建設地までを「基本」としてみると、単独施設の美山までは割高であること。
   
3. 岐阜市にとっても広域が有利
 岐阜市にとって、単独で負担する「80トン炉×2基分」と、広域で負担する「100トン炉のうちの80トン炉×2基の相当分」の建設・維持費を比べれば、広域処理の方がはるかに経済的に優れる。
 岐阜市は、善商の椿洞の産廃の後始末の経費の問題で周辺市町との合併が破綻し、不法投棄物の撤去についても経費が高額であることから「一部撤去」を選択せざるを得ない状況である。ゴミ処理の現行の広域処理を維持することは、岐阜市にとってもきわめて望ましい材料である。

4. 財源構成について
 (1) 合併特例債に関して
 単独の場合、国の総交付金額は9億2060万円となっている。
 「合併特例債を使ったときの交付金は、合併特例債借入額は17億1千万円で、地方交付税算入額は11億97百万円となる」(05年12月議会市民部長答弁)、「公共施設の改修、整備の項目で申請し、特例債の活用は可能であると思われる。が、審査基準が厳しいため活用できない場合があるかと思われるので、ご承知おきをお願いする」(同)。
 市町村合併における新市建設計画に本件単独ゴミ処理施設が位置づけられていないことから、合併特例債が許可される可能性はきわめて低い。

 (2)交付金に関して 
 国は2005年度より従来の補助金制度を交付金制度に切り替えた。この際、広域処理の事業であることが基本的前提とされている。県の資料(第2号証)では山県市の交付金は9億2060万円となっている。しかし、1999年3月策定の県の広域化計画(第3号証)に反して、単独処理することで国に申請しても交付金が下りない可能性がある。

5.  市の言い分への反論
  (1) 用地問題
 「用地が決まっていない中で、特に、ごみ処理施設の建設については、地元住民にすれば迷惑施設というイメージが強い施設であること。また、なぜ、私たちの地域に作らなければならないのかというような問題などが生じ、地元の理解と協力を得るには長期間を要することが予想される」(05年9月議会市民部長答弁)
 施設建設の経費だけでも7億円の違いがある。仮にその1/2を地元対策に使ったとしても、なお余りあるが、それでも市は地元対策・用地問題が解決困難としていることには何の根拠もない。

 (2) スケジュール
 「用地問題は大変紛糾していくだろう、そういった中で、平成22年という限度がある中で、それを対応しきれん」(同市長答弁)
 山県市は時間が無いというが、リミットはまだ5年先。しかも、岐阜市からは協議するならその期限は延ばしてもいい、との話も聞こえてくる。
 これだけの財政負担の違いが明らかになった以上、財政が厳しいからと合併した山県市が選ぶべき方向が広域処理なのは明らか。それを、試みてもいない「地元調整が困難」を理由に安易に走るのは、現在と将来の市民に対して無責任である。
 
 (3)岐阜市の圧力への懸念 
 市は、広域にすると岐阜市が過剰な負担を要求してくる可能性があるから、経費の違いは一概には言えないと流布しているようだ。
 百歩ゆずって、岐阜市が経費負担を余分に要求することがあると仮定しても、それは全体の数パーセントとかせいぜい一割以内のこと。それ以上は、独立した地方公共団体同士として許容されないことだから心配は無用である。
 
6. 多目的利用の可能性
 「単独の場合、施設内での利用が中心で、場内給湯、燃焼用空気の予熱及び煙突からの白煙防止のための利用方法。広域の場合、温水施設の規模にもよるが、一般的には1日のゴミ処理能力が100トン以上であれば可能と考えられる」(05年9月議会市民部長答弁)。
 温泉施設などに対する住民要望は非常に強い。施設やエネルギーの有効利用は時代の要請である。県の広域化計画にも熱利用が明示されている。

7. 事業が行われる確実性と差し止めと支出後の弁済
 (1) 本件は、業務委託報告(第1号証)を前提に、すでに県の交付金申請関連の書面(第2号証)において集約されている事業である。しかも、2005年度予算、06年度予算では、単独計画の施設を造るための環境アセスメント事業費(最終の契約額は619万5千円)及び山県市クリーンセンター整備計画仕様書作成業務委託料(2980万円)(第4号証)が組まれるなどしており、その熟度からして、明らかに、「当該行為がなされることが相当の確実さをもって予測される場合」(地方自治法第242条1項の括弧書)に当たる。

 (2) 差し止めと支出後の弁済
 単独の計画でスタートするか、広域の計画でスタートするかによって、供用開始以後20年から25年のゴミ処理事業の全体事業費(建設費及び維持費、運搬費など)のほぼすべてが、事実上、決定する。よって、現在山県市が進めようとしている市単独の計画を一刻も早く差し止める必要がある。
 もし、単独の計画が実行された場合の過剰な支出については、計画を意思決定した職員らが私費で市(即ち、市民・納税者)に賠償する義務がある。
 なお、仮に、単独で進めることを是としても、国の財政支援の前提である現行の広域計画を敢えて拒否することで、山県市が単独で負担すべき事業費が増えることも予想される。その場合に結果的に増加する市の公金の支出は、単独の意思決定をした職員らが私費で市に賠償する義務がある。

8. 違法性
 本件は、次の点において、職員に与えられた裁量権を著しく逸脱して違法なものである。
 (1) 山県市は、岐阜市と広域計画について真摯に交渉する意思がない。広域処理の可能性の手法や広域処理を不可能とする障害などについて、岐阜市と山県市との共同での各種協議の実質もなく、単に用地選定・地元同意が大変だからというだけで、著しく高い経費の山県市単独を選択することは明白な不作為である。

 (2) 自治体会計の原則違反
 安易かつ不合理な単独計画に過剰な公費をつぎ込むことは、地方自治法2条14項「最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない」に違反し、地方財政法第4条1項「必要且つ最少の限度をこえて、これを支出してはならない」に違反している。
 
 (3)社会通念上も、公序良俗としても、社会正義としても、これほどの無駄な支出をすることは許されない。

9. 山県市の損害
 下記11項の@ないしFで示す金額は、そもそも市の公費で負担する必要がないものだから、そのまま市の損害となる。

10. 職員
 市長は本件ゴミ処理施設に関連する市の支出と将来の事業の全責任を負うから、山県市が単独処理の意思決定をした場合には、それぞれの損害について賠償責任を負う。
 同時に、単独処理の意思決定に関与した職員らは全員が連帯して、それぞれの損害について賠償責任を負う。
 本件ゴミ処理事業に関して、いずれの経費についても、後日、予算執行が強行された場合は、その時点の執行権限を有する職員らも上記職員に連帯して、それぞれの損害について賠償責任を負う。

11. 請求人は監査委員に、「職員に次の勧告をすること」を求める。
 (1) 《単独計画に係る具体的な直近の支出に関する措置》
@単独計画の施設関連の環境アセスメント事業費619万5千円を支出してはならないこと。
A山県市単独計画を描くための山県市クリーンセンター整備計画仕様書作成業務委託料2980万円を支出してはならないこと。

 (2) 《将来の事業費の差し止めの措置》
B建設費に関して
 広域処理にすれば建設費は20億円で済むのだから、単独処理であったとしても広域処理であったとしても、施設建設費は20億円を超えて支出してはならないこと。
C20年間の維持費に関して 
 広域処理をすれば維持費は29億円で済むのだから、単独処理であったとしても広域処理であったとしても、20年間の維持費は29億円を超えて支出してはならないこと。

 (4) 《財源における市の不利益に係る損害の回復の措置》
D合併特例債に関して
 合併特例債が許可されなかった場合に、それに対応する市の単独支出額の増加分は、当該の事業の意思決定に関与した職員ら全員が個人として市に賠償すべきこと。
E交付金に関して 
 単独処理することで得られなくなる交付金が生じた場合に、それに対応する市の単独支出額の増加分は、当該の単独事業の意思決定に関与した職員ら全員が個人として市に賠償すべきこと。

(5) 《支出が強行された場合の損害の回復の措置》
F単独計画が強行されて経費支出が開始された場合には、
A. @及びAについては実際の支出額につき、職員らが個人として連帯して市に賠償すべきこと。
  B. Bについては所定額(20億円) を超えた支出額(見込み額8億円)につき、 職員らが個人として連帯して市に賠償すべきこと。
C. Cについては所定額(29億円)を超えた支出額(見込み額24億円)につき、 職員らが個人として連帯して市に賠償すべきこと。
                                以 上

第2 請求者     寺町知正   他 5 名
 以上、法第242条第1項により、事実証明書を添えて、必要な措置を請求します。
                          2006年3月10日
岐阜県山県市監査委員 各位
          別紙事実証明書目録
第1号証  2003年7月に山県市が「ごみ処理施設整備基本構想策定業務」として236万2500円で、名古屋市の株式会社・環境工学コンサルタント中部支社に委託した報告書の一部
第2号証  2005年7月の岐阜県内の交付金申請関連の集計(岐阜県公開)の一部
第3号証  1999年3月策定の「岐阜県のごみ処理広域化計画」の一部
第4号証  山県市の2005、06年度の予算書などの一部。環境アセスメント費、クリーンセンター整備計画仕様書作成業務委託料などが明示されている。
                                 以 上