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有罪確定首長退職金返還請求事件
訴訟物の価格 金1,600,000円
貼用印紙額 金13,000円
予納郵券代金 金9,000円
訴 状
原告 寺町知正 外12名(目録の通り)
被告 岐阜県市町村職員退職手当組合長 長屋勝司
岐阜県岐阜市薮田南5−14−53
被告 岐阜県山県市長 平野元
岐阜県山県市高木1000−1
2005年2月4日
岐阜地方裁判所民事部御中
原告選定当事者 寺 町 知 正
岐阜県山県市西深瀬208−1
TEL・FAX 0581−22−4989
原告選定当事者 長 屋 正 信
岐阜県山県市伊佐美156
TEL 0581−27−3351
請 求 の 趣 旨
1,被告組合長が、有罪が確定した元町長に対し、組合に、退職金1540万円を返還するよう請求をすることを怠ることは違法であることを確認する。
2,被告組合長は、元町長及び長屋勝司に対し、組合及び山県市に、金1540万円を支払うよう請求せよ。
3,被告組合長は、長屋勝司に対し、組合及び山県市に、金1540万円に対する2004年4月21日から完済の日まで年5分の割合による金員を支払うよ う請求せよ。
4,被告市長が、元町長及び長屋勝司に対し、山県市に、金1540万円を支払うよう請求をすることを怠ることは違法であることを確認する。
5,被告市長は、元町長及び長屋勝司並びに平野元に対し、山県市に、金1540万円を支払うよう請求せよ。
6,被告市長は、長屋勝司及び平野元に対し、山県市に、金1540万円に対するに2004年4月21日から完済の日まで年5分の割合による金員を支払うよう請求せよ。
7,訴訟費用は、被告らの負担とする。
との判決、ならびに仮執行宣言を求める。
請 求 の 原 因
第1 当事者
1, 原告は肩書地に居住する住民である。
2, 岐阜県市町村職員退職手当組合(以下「組合」という)は岐阜県内の多くの市町村並びに一部事務組合の常勤職員に対する退職手当の支給に関する事務を共同処理する地方自治法上の一部事務組合である。本件では、被告岐阜県市町村職員退職手当組合長長屋勝司(以下「被告組合長」という)とする。
3, 長屋勝司は、本件住民監査請求及び提訴時点で、組合の組合長であり、かつ、岐阜県板取村の村長である。なお、職を辞しても地方自治法上、本件住民訴訟の「職員」としての当事者適格が不変であることはいうまでもない。
4, 岐阜県山県郡高富町は、2003年4月1日に同郡美山町及び同郡伊自良村と合併し,岐阜県山県市となった。自治体合併の場合、合併前自治体の債権債務は合併後の自治体に継承する。山県市は組合の構成団体である。本件では、被告岐阜県山県市長平野元(以下「被告市長」という)とする。
5, 平野元は、本件住民監査請求及び提訴時点で、山県市の市長である。なお、職を辞しても地方自治法上、本件住民訴訟の「職員」としての当事者適格が不変であることはいうまでもない。
第2 本件住民訴訟の意義と本件請求の概要
1, 本件住民訴訟の意義
1991年5月には、高富町の現職議員4人及び前助役が逮捕された。1997年5月には現職の高富町長が収賄事件で逮捕された。その出直し選挙で刷新を訴えて当選した町長までもが、2002年5月に収賄で逮捕された(これが本件の汚職事件である)。
本件の刑事事件の法廷では、被告人側の請求で証人席に立った当時の助役に対して、検事が「行政として再発防止しようとするなら、職員が裁判の傍聴に来るはず。なぜ、来ないのか。反省がないのではないか」という旨をきつく問うていた。公職者の汚職防止には各種の制度改革が不可欠であるが、有効な改革の一つは、不正をした場合は厳格に対応するという方針の徹底と実行にあるのは明らかだ。しかし、山県市等は、反省に基づく有効かつ厳しい制度改革を実行しているようには見えない。
よって、住民の手で改善策を、一つずつ実行するしかない。
2, 本件請求の概要
岐阜県山県郡高富町の町長が収賄容疑で逮捕され、有罪となった。
本件の退職手当に関する条例では、刑事事件で禁固以上の有罪が確定した場合、組合長が退職金を当該職員に返還請求する規定になっている。それにもかかわらず、被告組合長は返還請求をしないとの方針を決定した。被告市長も同様に何も請求しないことを決めた。
よって、住民は「返還請求を怠ることは違法」等として訴えるしかない。
第3 刑事事件の概要
1, 刑事事件
山崎通高富町長(以下「元町長」という)は1997年6月の高富町長選挙において当選、2001年6月に再選された。
元町長は2002年4月28日から連日、県警の事情聴取を受け、高富町の公共事業(児童館「子どもげんきはうす」建設事業)に絡んだ収賄容疑で、5月1日に逮捕され、5月22日に岐阜地検により起訴された。
6月4日に高富町議会で辞職の承認を得た。
同年7月15日の第1回公判で起訴事実を認めた(甲第1号証の@AB)ので翌16日、保釈金500万円で保釈された。元町長は、途中、第3回公判から、「100万円は町長選挙のための陣中見舞い」等と主張し、容疑の否認に転じた。 しかし、結局、2004年2月6日に岐阜地裁で「禁固1年半、執行猶予5年、追徴金100万円」の判決をうけ、控訴しなかったので有罪が確定した。
なお、贈賄側業者は、2002年7月15日の第1回公判で起訴事実を認めて、同年12月26日に岐阜地裁で「懲役1年、執行猶予3年」を言い渡され、控訴せずに確定した。
2, 刑事事件の公判で明らかにされた事件の経過
元町長は2001年3月から贈賄側業者と接触を始めた。元町長は、同年4月に担当課が選定した「子どもげんきはうす」建設業者選定のための入札の指名業者のうちから、大手建設業者一社を外して贈賄側業者を加えるように助役に工作した。同年5月22日実施の入札の2日ほど前には贈賄側業者に予定価格を教唆、同入札では実際に贈賄側業者が落札した。元町長は、その直後の6月上旬に、町長室で、贈賄側業者から100万円を受け取った。
6月12日に町長選挙が告示されたが、元町長は、無投票で再選された。
同年7月6日から2期目の町長の任期が開始されたところ、7月26日開会の高富町臨時議会で同入札の状況が質疑されたことなどで不安を感じ、100万円の賄賂をいったん返却した。が、改めて欲しくなり同年8月上旬に自分の後援会に分けて振り込むよう贈賄側業者に求め、口座番号のメモを町長室で渡した。実際に、同年8月21日に100万円が振り込まれた。
第4 本件条例と退職金及び負担金
1, 返納規定
本件の岐阜県市町村職員退職手当組合条例(以下「本件条例」という)第15条の3の1項本文柱書は、「退職した者に対し一般の退職手当等の支給をした後において、その者が在職期間中の行為に係る刑事事件に関して禁固以上の刑に処せられたときは、組合長はその支給した一般の退職手当等の額のうち次に掲げる額を返納させることができる」とし、同2号は、「(2) 前号に掲げる場合以外の場合一般の退職手当等の額の全額」としている。
なお「返納させることができる」とは、自由裁量ではなく羈則裁量である。
2, 退職金の額
長の退職金の算出は本件条例第6条1項本文で「退職の日におけるその者の給料月額に勤続期間を乗じて得た額」、同1号において「在職期間1年間につき100分の500」とされているから、在任1期の4年間で100分の2000となる。即ち、当時の高富町長の条例で規定する給料月額は77万円であるから、本件退職金支給額は1540万円である。
3, 山県市(旧高富町)が退職金として組合に拠出した負担金
(1) 狭義の負担金
山県市が組合に拠出した金額は、本件条例第17条本文において「職員の給料月額に応じて負担する」とされ、2号で「特別職は1000分の300」とされる(狭義の負担金)。
また、負担金については、就職または退職の月において日割り計算で給料を支給された場合の負担金の算定の基礎となる給料は前月分の給与月額とする(条例施行規則)。
よって、元町長の1期目在任中に当該退職金充当分として毎月組合に納付された額の合計は、77万円×(1000分の300)×(12カ月分×4年+1カ月分)で算出した1131万9千円である。
(2) 広義の負担金
組合は独自の財源は持たないから、当該退職金の残りの額(1540万円−1131万9千円=)408万1千円の最終的な出所の確認が不可欠である。山県市が出しているのか、組合が独自に出しているのか、例えば国からの助成金・補助金等が一部でもあるのか、などの疑問があるからだ。
この点に対する2004年9月の山県市の説明では、「組合に確認したところ、組合は全体をプールして運用しているので、突き詰めれば全額が山県市の拠出分という認識でよい」との旨であった。即ち、山県市のすべての職員分として、毎月負担金を拠出している分の合計の金員が認識できるところ、その中から元町長に対する退職金も全額が支給されたものということになる(広義の負担金)。
第5 本件当事者の考え
1, 被告組合長の考え
被告組合長は、返還請求すべきか否かに関して、争点となるのは100万円の受領時期であるが、当該刑事事件の判決文などからすると、現金収受は2001年8月28日であるところ、その時は既に2期目に入っているから、1期目の退職金を返還請求すべき場合には当たらないと判断した(甲第3号証のA)。
2, 被告市長の考え
被告市長は、被告組合長の判断に追随する考えであり(甲第2号証の@AB)、2004年10月18日の被告組合長の通知(甲第3号証のA)に従った。
3, 本件原告の考え
(1) 本件条例は「その者が在職期間中の行為に係る刑事事件に関して」としている。この事件は、町長の1期目の任期(2001年7月)の終了前になされた行為を原因とし逮捕され、有罪が確定した。この経過は、前記第3で述べたとおり、報道記事等(甲第1号証)にも明らかである。犯罪は一連の所作の結果である。本件事実経過からすれば、2001年3月の業者との接触から6月の100万円の受け取り、7月頃の返却、同年8月の再受領までの行為は一連かつ不可分なものである。
仮に、分断して考えるとしても、実際に当初の金銭授受は6月なのだから、1期目の任期中である。その後にいったん返したとか再度要求したとかは後続の事情である。
よって、退職金は返還請求されねばならない。
(2) 被告組合長は、「行為は2001年8月28日」としている。が、行為を「2001年8月28日」に極限したときは、それは単なる「金銭授受行為」としての評価であるから、政治家に対する単なる「政治資金の提供」であり、元町長の主張と同じ「100万円は6月の町長選挙のための陣中見舞い」である、ということになる。つまり、被告組合長や被告市長の考えでは、本件事件は、政治資金規制法の問題であって、収賄事件ではない、ということになってしまい、本件の本質的な事実経過に反した解釈となってしまう。
4, 実際に、判例や実例は次のとおりである。
本件事案においては、「犯罪の時期をどう評価するか」が最大の争点と考えられる。よって、判例と実例を示す(甲第4号証に概要をまとめた)。
(1) 最高裁判所第3小法廷/昭和26年(あ)第219号/昭和27年7月22日判決は、「公務員が請託を受けて賄賂を収受した事実ある以上収賄罪は成立し、賄賂の収受が事前なると事後なるとは犯罪の成否に影響なきことは従来判例の趣旨に徴して明らかである。」としている。
(2) 大阪タクシー汚職事件では贈賄罪が成立するとした判決に対する最高裁判所第3小法廷/昭和58年(あ)第770号/昭和63年4月11日決定は上告を棄却したが、その原審は、「最初に受け取った金員をひそかに私設秘書を通じて戻し、後に改めて後援会の銀行預金口座に振込入金させるという工作がなされているが、当該金員は後援会に渡されたものでなく、個人に供与されたものである」と認定している。
(3) 宮城県知事が大手建設会社役員等から収受した金員の賄賂性を肯定し、実刑を言い渡した贈収賄事件に対する判決、即ち、東京地方裁判所/平成5年刑(わ)第2442号、平成5年刑(わ)第2020号、平成5年刑(わ)第2220号、平成6年刑(わ)第161号/平成9年3月21日判決(確定)は、「被告人は、・・・マスコミで自己の収賄疑惑が取りざたされるようになるや、直ちに被告人乙川に右ワリノー(額面2065万円)を返還した・・・犯罪の成否を検討するに、・・・ゼネコン汚職疑惑の報道がなされるや、直ちにワリノーを返還した上、知人との間で受領後間もなく返還したとの口裏合わせを行っていることなどの諸事情が認められる。・・・・これらの事情を総合して検討すると、本件2000万円が賄賂であって、被告人がその趣旨を明確に認識した上で受け取ったものであることは優に認められる。」としている。
(4) 徳島県の圓藤元知事は、2001年9月の知事選挙で3選されたが、2002年3月に収賄容疑で逮捕され辞職した。最終的に裁判で禁固以上の刑が確定したので、徳島県は、3期目の任期途中までのおよそ624万円の退職手当を支給せず、1期目と2期目の任期満了の際にそれぞれ5096万円ずつ支払っていた退職手当についても、その全額を返納させた。
第6 被告らの違法性
1, 被告組合長の違法
被告組合長が、元町長に対して、高富町長としての1期目の退職金1540万円につき返還請求権を行使しないことは、本件条例第15条の3の1項に違反するもので、財産の管理を怠る事実として違法である。
同時に、地方自治法第2条14項(最小経費で最大効果を挙げなければならない原則)に違反し、地方財政法第4条(必要かつ最小限度を越えて支出してはならない原則)に違反する。
社会通念にも反する。
2, 被告市長の違法
被告市長が職員の退職手当のために支出した負担金に関して、本件条例第15条の3の1項に違反して「被告組合長が元町長に、1期目の退職金1540万円を返還請求しない方針を決定したこと」で、最終的に山県市に損害が生じるとの評価があり得る。よって、被告市長が、組合長個人に損害賠償請求もしくは元町長に損害賠償請求あるいは不当利得返還請求をしないことは財産の管理を怠る事実として違法である。
同時に、地方自治法第2条14項に違反し、地方財政法第4条に違反する。
社会通念にも反する。
第7 組合及び山県市の損害について
1, 損害の所在の認定
(1) 一部事務組合の財務等に関して、構成自治体の住民は当該組合監査委員に対して住民監査請求できることは確定した判例である。
本件の退職金1540万円に関して、住民が山県市監査委員に監査請求した場合、住民訴訟において、そもそも組合に監査請求すべきであると却下される可能性がある。仮に、進んで、本案について審査されて、各種の違法性が認識されたとしても、損害の有無に関しては結局は組合の予算の中のことであるから、山県市に損害は生じない、との棄却判決もあり得る。
(2) ところで、国や県から市町村に交付された補助金に関して、その補助事業の執行に係る違法性が認定され、さらに補助事業費の相当額が損害といえる場合であっても、住民訴訟の判決においては、「当該市町村の損害」として認定されるのは当該市町村が「純粋に支出した分」のみであって、国や県から市町村に交付された「補助金の分」については当該市町村の損害ではない、と認定されることが少なくない。
これに照らすと本件では、組合監査委員のみに監査請求した場合、住民訴訟において違法性が認定されたとしても、損害の有無に関しては、もともとは全額が山県市の負担金であるから、組合側に違法があっても組合に損害は生じない、との判決もあり得る。
(3) 本件のような事案における判例は見当たらないところ、以上のことから考えると、本件においては、住民は、退職金1540万円に関して、組合監査委員および山県市監査委員に同時に監査請求しておくしかない。そして、最終的に、損害がどちらに帰属するかについては裁判所の認定に待つほかない。
2, 組合の損害
前記のとおり、組合監査委員に対してした監査請求における争点の退職金について、組合に対して構成市町村から拠出された負担金が組合の固有の財源として評価されるなら、違法性が認定され、かつ生ずる損害は組合に帰属する。
3, 山県市の損害
山県市監査委員に対してした監査請求における争点の退職金について、全額が負担金を拠出した当該自治体の固有の会計の問題として評価されるなら、違法性が認定され、かつ生ずる損害は山県市に帰属する。
第8 組合長及び市長の責任と被告らがなすべきこと(原告の求めること)
1, 被告組合長に関して
(1) 要点
条例に基づく返還請求権の発生から11ケ月が徒過してしまった。いずれ時効になる。よって、被告組合長は直ちに元町長に返還請求すべきである。仮に請求しない場合、請求を怠ることによって生じる組合もしくは山県市の損害については組合長個人が自ら支払うべきである。
しかも、本件の場合においては、返還請求しないとの誤った判断をしたことで、既に損害が発生したと評価せざるを得ない特殊なケースである。
(2) 怠る事実の認定(本件の請求の趣旨−1)
原告は、地方自治法第242条の2の第1項3号に基づき、被告組合長が元町長の1期目の退職金1540万円に対する返還請求権の行使をしないことは、財産の管理を怠る違法なことであるとの確認を求めるものである。
(3) 損害の補填(本件の請求の趣旨−2)
被告組合長が返還請求権の行使をしないことを決定したことで損害が生じたと判断すべきところ、原告は、地方自治法第242条の2の第1項4号に基づき、被告組合長が組合長個人及び元町長に対して、組合もしくは山県市に金1540万円を支払らうよう請求することを求めるものである。
(4) 遅延利息の扱い(本件の請求の趣旨−3)
被告組合長に返還請求権の発生した2004年2月21日以降、当該請求権の行使、それに対する当事者からの返還行為に幾分の期日を要することは致し方ないところ、社会通念上許容される期間につき、本件原告は最大限60日(2カ月)であると主張する。よって、2004年4月21日以降は金1540万円に係る遅延利息(年5%)が生じているというべきところ、遅延利息の発生及び累積は被告組合長の著しい怠慢もしくは明白な過失であり、さらに、同年10月中旬に「返還請求しない方針を決定した」ことは組合長の故意もしくは重大な過失によるものである。
即ち、金1540万円に係って返還請求権の行使を怠ることで、2004年4月21日から完済の日までに生じる遅延利息(年5%)につき、組合長は個人として組合もしくは山県市に支払うべきである。
よって、原告は、誰が1540万円を負担するかに関係なく、地方自治法第242条の2の第1項4号に基づき、被告組合長が組合長個人に対して、金1540万円に係って2004年4月21日から完済の日までの遅延利息(年5%)につき、組合もしくは山県市に支払らうよう請求することを求めるものである。
2, 被告市長に関して
(1) 要点
被告組合長が、元町長に1期目の退職金1540万円を返還請求しないと決定したことで最終的な損害が山県市に生ずるとの認定があり得る。
しかも本件の場合においては、被告組合長が、返還請求しないとの誤った判断をしたこと、加えて、被告市長も追随を決定したことで、既に損害が発生したと評価せざるを得ない特殊なケースである。
山県市に損害が生じたと評価する場合は、被告市長は組合長個人に損害賠償請求もしくは元町長に損害賠償請求あるいは不当利得返還請求すべきである。
仮に請求しない場合、請求を怠ることによる山県市の損害について市長個人及び組合長個人が支払うべきである。
(2) 怠る事実の認定(本件の請求の趣旨−4)
最終的に山県市に損害が生ずるとの認定の場合において、原告は、地方自治法第242条の2の第1項3号に基づき、被告市長が、金1540万円につき、組合長個人に損害賠償請求もしくは元町長に損害賠償請求あるいは不当利得返還請求をしないことは財産の管理を怠る違法なことであるとの確認を求めるものである。
(3) 損害の補填(本件の請求の趣旨−5)
最終的に山県市に損害が生ずるとの認定の場合において、被告市長が何も請求しないことを決定したことで損害が発生したと評価せざるを得ないところ、原告は、地方自治法第242条の2の第1項4号に基づき、被告市長が市長個人及び組合長個人並びに元町長に対して、山県市に金1540万円を支払うよう請求することを求めるものである。
(4) 遅延利息の扱い(本件の請求の趣旨−6)
被告市長が、1540万円に係って、請求権の行使を怠ることで生じた返還手続きのための許容期間経過後の2004年4月21日から完済の日までに生じる遅延利息(年5%)につき、遅延利息の発生及び累積は被告市長の著しい怠慢もしくは明白な過失であり、さらに、同年10月中旬に「返還請求しない方針を決定した」ことは、被告市長の故意もしくは重大な過失によるものである。
即ち、1540万円に係って、請求権の行使を怠ることで2004年4月21日から完済の日までに生じる遅延利息(年5%)につき、市長は個人として山県市に支払うべきである。
よって、原告は、最終的に山県市に損害が生ずるとの認定の場合において、誰が1540万円を負担するかにかかわらず、地方自治法第242条の2の第1項4号に基づき、被告市長が市長個人及び組合長個人に対して、金1540万円に係って2004年4月21日から完済の日までの遅延利息(年5%)につき、山県市に支払うよう請求することを求めるものである。
第9 住民監査請求前置と本件提訴
1, 原告の住民監査請求
原告らは、2004年12月10日に組合監査委員及び山県市監査委員に対して、同じ文で住民監査請求を行った(甲第5号証)。
2, 組合監査委員
組合監査委員は、2005年2月1日付けで、前記第5の1の旨を述べて「棄却」の監査結果を通知した(甲第6号証)。
3, 山県市監査委員
山県市監査委員は、2005年1月6日付けで、請求人に陳述の機会すら与えずに「却下」の監査結果を通知した(甲第7号証)。手続き及び内容とも違法な監査というしかない。
4, 併合請求
本件は、原告を一とし、被告を異とするが、内容からして関連請求であることは明らかであり、地方自治法第242条の2の第11項において準用する行政事件訴訟法第43条が準用する同法第17条《共同訴訟》の原始的主観的併合の請求の場合に当たるといえる。
以 上
《証 拠 方 法》
証拠説明書(1)記載の甲第1ないし7号証
その他口頭弁論において、必要に応じて、追加提出する。
《添付書類》
別紙の選定書一式及び当事者選定書届書
2005年2月4日
岐阜地方裁判所民事部御中
原 告 寺町知正 外12名