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首都機能移転誘致関係経費支出の

   返還請求の提訴に当たって


くらし・しぜん・いのち 岐阜県民ネットワーク
(2003年1月24日提訴)

◆ここ数年問の総理官邸や中央省庁の庁舎建て替え等の状況を見れば、首都機能移転がなくなったということは、多くの人が常識的に理解しています。
 しかし、岐阜県知事は、移転がなくなれば、国等に対し損害賠償請求を検討すると表明しています。これは勝手に誘致運動に熱を上げ多額の無駄使いをしてきたことの言い訳に過ぎません。賠償責任発言は、国会を威圧し、県民を欺くパフォーマンスに過ぎません。

◆99年12月、国会等移転法に従って候補地が3地域に絞り込まれました。仮に、この時点までは全国の候補地との競争のために多額の県費をつぎ込んだことが県知事の政策判断であると言えるとしても、もはや今の段階は「移転の予定地の決定」は国会の権限であり、地方公共団体の意思や世論の高揚などで決まるものではありません。よって、地方の費用で国民や県民に首都機能移転をPRするために宣伝費を支出する根拠はありません。
◆地方財政法第12条第1項は「地方公共団体が処理する権限を有しない事務を行うために要する経費については、国は、地方公共団体に対し、その経費を負担させてはならない。」とし、同第2項で例示して「国の機関の設置、維持及び運営に要する経費」としています。国の機関を移転し設置する候補地選定に関する経費は国が負担すべきは当然です。
 また、地方自治法232条1項において、地方公共団体は、当該地方公共団体の事務を処理するために必要な経費を支弁するものとされ、その反面として、当該事務に属しない事務の処理のために費用を支弁することは許されていません(名古屋高裁判示)。

◆知事の損害賠償請求論が成り立つということは、国等が地方に首都機能移転関係の費用の支出を求め、県もこれに応じていたのに、首都機能移転が中止される、という事態だということです。しかし、そもそも、この関係は地方財政法第12条に反しています。上記のとおり、候補地選定に関する経費は国が負担すべきものなのです。
 誤って地方公共団体の予算を費消した県知事ら職員は、県に弁償するしかありません。 でも、知事らにその気はまったくなく、相変わらず県費を使う(今までの合計が約4億円、今年度も4380万円を計上)、というのです。
 だから、私たちが住民監査請求・住民訴訟をして、貴重な県費の損害を知事個人に弁償(返還)してもらうしかありません。

◆なお、県民ネットは、岐阜県の首都機能移転の宣伝費用につき、96年秋に55人で住民監査請求し、96年11月28日に2億4千万円の返還をすべきと住民訴訟を起こしました。岐阜地裁は棄却でしたが、名古屋高裁は00年10月6日「被控訴人(梶原拓)は岐阜県に164万8000円及びこれに対する平成8年12月28日から支払い済みまで年5分の割合による金員を払え。」と命じました。現在、知事らが最高裁に控訴中です。

◆「首都機能移転」の審議の経過は、99年12月20日に審議会が3候補地を首相に答申、衆院特委が02年5月末日をめどに候補地を1つに絞り込むとしていましたが、5月30日に両院議長のもとに新たな審議機関を設置することを決定。新機関では移転見送りも議論され、「03年の通常国会で結論を出すこと」を申し合わせました(02年7月25日)。