原告
岐阜県山県郡高富町西深瀬二〇八番地の一 寺  町  知  正
岐阜市市橋五丁目五番八号        高  田  正  明
美濃市大矢辞一四三四番地        後  藤  兆  平
岐阜県揖斐郡谷汲村岐礼一〇四八番地の一 山  本  好  行
岐阜市大洞柏台一−一(一八三八号)   小  山  正  行

  被告
 岐阜市薮田南二丁目一番地の一      岐阜県知事 梶原拓  

実行委員会文書不存在処分取消請求事件

   訴訟物の価格   金九五〇、〇〇〇円
    貼用印紙額      金八、二〇〇円
予 納郵券 金九、一五〇円
 二〇〇〇年五月二二日
岐阜地方裁判所民事部御中

請 求 の 趣 旨

一 被告岐阜県知事の原告に対する一九九七年一〇月三一日付け非公開処分(工振第五三八号の二) (別紙−1の通り)を取り消す。

二 被告岐阜県知事の原告に対する一九九九七年一一月七日付け非公開処分(地振第四九四号)(別紙−2の通り)を取り消す。

三 被告岐阜県知事の原告に対する一九九九七年一一月七日付け非公開処分(地自第二一六号)(別紙−3の通り)を取り消す。

四 被告岐阜県知事の原告に対する一九九九七年一一月七日付け非公開処分(国文第五九号)(別紙−4の通り)を取り消す。

五 被告岐阜県知事の原告に対する一九九九七年一一月七日付け非公開処分(総文第一六八号の二) (別紙−5の通り)を取り消す。

六 被告岐阜県知事の原告に対する一九九九七年一一月七日付け非公開処分(総文第一六八号)(別紙−6の通り)を取り消す。

七 訴訟費用は、被告の負担とする。
  との判決を求める。

請 求 の 原 因
第一 当事者
一 原告らは肩書地に居住する岐阜県民であり、本件各文書の公開請求を行った。

二 被告岐阜県知事梶原拓(以下、被告知事という)は、岐阜県情報公開条例(以下、本件条例という)第二条第一項の実施機関である。

第二 非公開(文書不存在)処分の存在
一1 原告らは、一九九七年一〇月二〇日付で「宇宙技術及び科学の国際シンポジウム岐阜県事業実行委員会」に関する公文書についての公開請求を行った。

 2 右請求に対し、被告知事は、一九九七年一〇月三一日付けで、「工業振興課の主管した一九九六年度における、第二〇回宇宙技術及び科学の国際シンポジウム岐阜県事業実行委員会について、支出した負担金等の支出に関して、収支予算書及び決算書の明細を表す文書(積算根拠などや請求書、領収書なども含む)、実行委員会の名簿」(以下、本件文書@という)を不存在とする処分(工振第五三八号の二)(以下、本件処分@という)を行った。

 3 原告らは、一九九七年一一月一七日付けで被告に対して異議申立を行った。

 4 被告知事は、本件条例に従い、九七年一二月八日、岐阜県公文書公開審査会に諮問した。

 5 右審査会は、一九九八年一二月一四日以降一九九九年九月八日までに、五回の審議を行い、一九九九年一〇月一八日付けで被告に「公文書非公開決定は妥当である」との答申(答申三六号)(甲第一号証)を行った。

 6 これを受け、岐阜県知事は二〇〇〇年二月二三日付けで、「本件異議申立は、これを棄却する」との決定を行い(新政第六二五号)(甲第二号証)、郵送で原告らに通知した。

二1 原告らは、一九九七年一〇月二七日付で「飛騨・美濃地域おこしフェア実行委員会」に関する公文書についての公開請求を行った。

 2 右請求に対し、被告知事は、一九九七年一〇月三一日付けで、「地域振興課の主管した一九九六年度における、飛騨・美濃地域おこしフェア実行委員会について、支出した負担金等の支出に関して、収支予算書及び決算書の明細を表す文書(積算根拠などや請求書、領収書なども含む)」(以下、本件文書Aという)を不存在とする処分(地振第四九四号)(以下、本件処分Aという)を行った。

 3 以下、異議申立・諮問・答申・決定の月日及び内容は、右第二の一項の3乃至6と全く同日、同旨であった。

三1 原告らは、一九九七年一〇月二七日付で「全国地域づくり先進事例会議inぎふ実行委員会」に関する公文書についての公開請求を行った。

 2 右請求に対し、被告知事は、一九九七年一〇月三一日付けで、「自治大学校の主管した一九九六年度における、全国地域づくり先進事例会議inぎふ実行委員会について、支出した負担金等の支出に関して、収支予算書及び決算書の明細を表す文書(積算根拠などや請求書、領収書なども含む)、実行委員会の組織表(名簿)」(以下、本件文書Bという)を不存在とする処分(地自第二一六号)(以下、本件処分Bという)を行った。

 3 以下、異議申立・諮問・答申・決定の月日及び内容は、右第二の一項の3乃至6と全く同日、同旨であった。

四1 原告らは、一九九七年一〇月二七日付で「第一四回国民文化祭岐阜県実行委員会」に関する公文書についての公開請求を行った。

 2 右請求に対し、被告知事は、一九九七年一〇月三一日付けで、「総合文化振興課の主管した一九九六年度における、第一四回国民文化祭岐阜県実行委員会について、支出した負担金等の支出に関して、収支予算書及び決算書の明細を表す文書(積算根拠などや請求書、領収書なども含む)」 (以下、本件文書Cという)を不存在とする処分(国文第五九号)(以下、本件処分Cという)を行った。

 3 以下、異議申立・諮問・答申・決定の月日及び内容は、右第二の一項の3乃至6と全く同日、同旨であった。

五1 原告らは、一九九七年一〇月二七日付で「文化庁芸術祭岐阜公園実行委員会」に関する公文書についての公開請求を行った。

 2 右請求に対し、被告知事は、一九九七年一〇月三一日付けで「文化庁芸術祭岐阜公園実行委員会について、支出した負担金等の支出に関して、収支予算書及び決算書の明細を表す文書」(以下、本件文書Dという)を不存在とする処分(総文第一六八号の二)(以下、本件処分Dという)を行った。

 3 以下、異議申立・諮問・答申・決定の月日及び内容は、右第二の一項の3乃至6と全く同日、同旨であった。

六1 原告らは、一九九七年一〇月二七日付で「岐阜県民文化祭運営協議会」に関する公文書についての公開請求を行った。

 2 右請求に対し、被告知事は、一九九七年一〇月三一日付けで、「総合文化振興課の主管した一九九六年度における岐阜県民文化祭運営協議会について、支出した負担金等の支出に関して、収支予算書及び決算書の明細を表す文書」(以下、本件文書Eという)の文書を不存在とする処分(総文第一六八号)(以下、本件処分Eという)を行った。

 3 以下、異議申立・諮問・答申・決定の月日及び内容は、右第一の一項の三乃至六と全く同日、同旨であった。

第三 本件条例の主旨、目的と実施機関の立証責任
一 本件条例は、県政の実情などに対する県民の理解を深め、県政に対する県民の信頼を高めるために制定されたもので、実施機関が管理する情報について公開を原則とし、非公開は例外である。条例各条項や非公開事由該当性(適用除外事由)の解釈を、専ら行政機関の側の利便等を基準・根拠に、その主観的判断に基づいて決するとすれば、非公開・不存在とする範囲が不当に拡大する危険性があり、情報公開制度の実質的意味が失われることにもなりかねず、条例の解釈は厳格でなければならない。

二 本件条例第二条二項の意味
  同条項は、「公文書」の定義規定であるが、本件で関係あるのは、「職務上作成し、又は取得した」と「実施機関が管理しているもの」の意味である。
 これについて、「岐阜県情報公開条例解釈運用基準」(以下、解釈運用基準という)は次のように解説している(甲第三号証)。

 「2 『職務上作成し、又は取得した』とは、実施機関の職員が自己の職務の範囲内において事実上作成し、又は取得した場合をいい、文書等に関して法律上の作成権限又は取得権限を有するか否かを問わない。
  『職務』には、国等が法律又はこれに基づく政令による知事その他の実施機関に委任した事務(機関委任事務)及び地方自治法第一八〇条の二又は第一八〇条の七の規定により他の実施機関から委任を受け、又は他の実施機関の補助執行として処理している事務等を含む。
  したがって、次の事務は、『職務』に含まれない。
  ア 職員が地方公務員等共済組合法第一八条(地方公共団体の便宜の供与)の規定等により、他の法人の事務に従事している場合における当該事務(略)

 3  『職務上』というためには、次の時点以降の公文書をいう。
   ア 作成したものについては、職務上の内部検討に付された時点以降のもの
   イ 取得したものについては、受領した時点以降のもの
  『受領した時点』とは、収受印の押印の有無を問うものではないので、例えば、会議で配布される資料などについては、職員が文書の配布を受けた時点から公文書となる。

  (略)

  8 『実施機関が管理しているもの』とは、各実施機関において定めている公文書管理規定等の定めるところにより保管し、又は保存することにより、公的に支配している公文書をいう。
   したがって、備忘的メモ、参考資料など職員が職務を執行する過程において作成した事務処理上の補助的文書は、対象公文書に含まれない。ただし、起案文書等に添付された場合は、当該起案文書等の一部となっていることから、対象公文書に含まれることになる。

  9 保存期間が過ぎた公文書であっても、廃棄されずに保管又は保存されている場合には、「管理しているもの」に当たり、対象公文書に含まれる。」

三 実施機関は、処分に当たっては、条例を十分に検討して処分決定したのであるから、行政処分取消訴訟においては、条例適合性や非公開事由該当性を直ちに明確かつ具体的に立証する責任がある。

第四 本件処分@の違法性
一 解釈運用基準2に、「文書等に関して法律上の作成権限又は取得権限を有するか否かを問わない」とあるように、当該文書の作成名義人が誰かは問題ではないく、例えば、私人が作成した文書でも右要件を満たすかぎり情報公開請求の対象たる「公文書」に該当する。
 これを本件に当てはめると、「実行委員会が実施機関と同一の団体であるのか、実施機関とは別個独立した団体であるのかによる」という、決定書の判断根拠(甲第二号証、決定の理由・冒頭)そのものが誤っている。実行委員会の性格や独立性は問題ではないのである。

二 異議申立に対する被告の非公開理由説明書(甲第四号証)最終段において、処分庁である被告は 「本件文書は、要綱により実行委員会の事務局が置かれた県(工業振興課)が、いわば関係団体を代表して保管しいるだけであり、当然のことではあるが、県の公文書として公文書規定により管理しているわけではない」と述べているが、解釈運用基準9において「保存機関が過ぎた公文書であっても、廃棄されずに保管又は保存されている場合は、『管理しているもの』に当たり、対象公文書に含まれる」とあるように、文書管理規定を外れたものでも対象公文書となる。
 文書管理規定に具体的に例示される文書の種類に合致しなくても、事実上管理されていれば、対象公文書となし、解釈運用基準8において、「公文書管理規定等」とされているとおり、公文書管理規定のみを指しているものではなく、通常に考えて職員が当該文書を整理し保管・管理していれば、条例にいう「管理している」に当てはまるものである。

三 決定書(甲第二号証)の決定の理由の(2)の後段において、処分庁は「実行委員会の業務は・・・本来県として行うことができる性質を有するものであり、かつ、県が適法にその事業の実施について共催や協力を決定した限りにおいて、当該業務は本来県がなすべき事務に含まれると解される」としているのであるから、本件文書は「職務上において作成取得したもの」であることは、当然である。

四 被告知事は、実行委員会の文書のうち「工業振興課が、平成八年度において第二〇回宇宙技術及び科学の国際シンポジウム岐阜県事業実行委員会に対し支出した負担金等の支出に関する下記の文書 1 支出金調書  2 経費支出伺い  その他当該委員会から取得した実施にかかる計画書及び報告書」の各種の文書について、本件条例第六条四号(事業活動情報)該当部分(印影・備考欄・口座欄等)を除いて公開している。

 1 右公開文書の内の収支決算書(甲第五号証)の記載の主なものによれば「収入の部・県負担金 四一八一万一〇〇〇円(二四四八万一〇〇〇円)収入総合計四八七一万二六五一円、支出総額四六四七万三八一八円、差引残額二二三万八八三三円。《余剰金処分》精算の結果生じた余剰金については、実行委員会の議決に基づき、全額岐阜県へ返還する。」などとされ、差引残額二二三万八八三三円を岐阜県へ返還している。

 2 被告は、「実行委員会には予算執行権が及ばない」としているが、本件実行委員会の右支出に関する不正経理事件が発覚(甲第六号証)して後、この不正経理額が県庁内の調査によって確定され、これを「県に返還した」ものである(甲第七号証)。
 3 このように、余剰金が全額県に当然のこととして戻されていることからも、当該実行委員会に関する文書は県の管理である、とみるべきである。

五 本件実行委員会の規約(甲第八号証)において事務局を岐阜県工業振興課に置くことが明示されている。また、決定書(甲第二号証)の決定の理由の冒頭において、被告は「本件文書は、実行委員会事務局において事務局の職員が職務上作成し、又は取得し、実行委員会事務局が管理している(実行委員会の解散後においては、工業振興課(公開請求当時の名称)が保管している)」としているように、実行委員会の事業進行中はもちろん、事業が終了したことで実行委員会が実質的に解散してもなお関係文書が県の担当課に存在している。県は、「当該文書・資料を保管しているのはあくまでも実行委員会だ」と強弁するけれど、これらからも本件文書が県の管理保管にかかるものであることに疑いない。

六 神奈川県公文書公開運営審議会は、本件同様の実行委員会の文書について、「実施機関の職員が実行委員会等の事務局に携わっている場合は、一般原則に従い公開の対象とすべきである」としている(甲第九号証)。

七 多治見市公文書公開審査会は、「区長会は市の機関ではないけれど市が事務局を行っているのであるから、市にある区長会の文書は公開すべき」と答申し、これを受けて、多治見市は当該文書を公開した(甲第一〇号証)。

八 以上、本件文書が県庁の中に存在しかつこれを県職員が管理保管しているにもかかわらず、これを「取得していない」として不存在との扱いをする処分は違法であるので、取消されるべきである。

第五 本件処分A乃至Eの違法性
一 本件処分Aは、残額を次年度繰り越しとする(甲第一一号証)ため右第四の四の問題発覚に伴う調査後の返還額こそないが、その他は本件処分@と同様である。

二 本件処分Bは、収支の残額がない(甲第一二号証)ため右第四の四の問題発覚に伴う調査後の返還額こそないが、その他は本件処分@と同様である。

三 本件処分Cは、右第四の四の問題発覚に伴う調査後の返還額が四万九九三三円(甲第一三号証)であるほか、本件処分@と同様である。

四 本件処分Dは、右第四の四の問題発覚に伴う調査後の返還額が一七一七万二〇四〇円(甲第一四号証)であるほか、本件処分@と同様である。

五 本件処分Eは、右第四の四の問題発覚に伴う調査後の返還額が二〇三万九八五〇円(甲第一五号証)であるほか、本件処分@と同様である。

第六 結び
 岐阜県行政が公正、公平に事務事業を執行していることが公知されるためには、これら公文書が公開されることが必要で、公開によって県民の県政への理解と信頼が高まることは明らかである。本件情報が公開されることは、本件条例の解釈、運用として正当なものである。                                     以 上



その他、口頭弁論において、随時、追加提出する。

岐阜県山県郡高富町西深瀬二〇八番地の一 
  原告 寺町知正 外四名

岐阜地方裁判所民事部御中
  以 上
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

実行委員会文書不存在処分取消請求事件

     原告  寺  町  知  正
          高  田  正  明
          後  藤  兆  平
          山  本  好  行
          小  山  正  之   
    被告  岐阜県知事 梶原拓  

証 拠 説 明 書

 二〇〇〇年五月二二日

岐阜地方裁判所民事部御中

甲第一号証 一九九九年一〇月一八日付け、岐阜県公文書公開審査会答申の写し

甲第二号証 二〇〇〇年二月二三日付け、被告の決定書(新政第六二五号)の写し

甲第三号証 岐阜県情報公開条例解釈運用基準の本件条例第二条二項に関する解説部分の写し

甲第四号証 一九九九年三月三日付け、異議申立への被告の非公開理由説明書(工振七七〇号)の写し

甲第五号証 第二〇回宇宙技術及び科学の国際シンポジウム岐阜県事業実行委員会の収支決算報告

甲第六号証 不正経理をスクープ報道した週間フライデー(九七年三月二一日号)の関連ページ

甲第七号証 事件直後の県議会での批判や議論の報道、その他の報道記事

甲第八号証 第二〇回宇宙技術及び科学の国際シンポジウム岐阜県事業実行委員会の規約(要綱)

甲第九号証 本件同様の実行委員会文書の公開を求めた神奈川県公文書公開運営審議会の答申

甲第一〇号証 多治見市公文書公開審査会が市に事務局のある区長会の文書の公開求めた、との記事

甲第一一号証 飛騨・美濃地域おこしフェア実行委員会の収支決算報告

甲第一二号証 全国地域づくり先進事例会議inぎふ実行委員会の収支決算報告

甲第一三号証 第一四回国民文化祭岐阜県実行委員会の収支決算報告

甲第一四号証 文化庁芸術祭岐阜公園実行委員会の収支決算報告

甲第一五号証 岐阜県民文化祭運営協議会の収支決算報告
    以 上

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