監委第85号
                    平成12年6月16日
 (請求人) 様
            岐早県監査委員 白 木  昇   印
            岐阜県監査委員 丹 羽 正 治  印

 住民監査請求に基づく監査結果について(通知)


 平成12年4月17日付けで提出のあった住民監査請求について、地方自治法(昭和22年法律第67号)第242条第3項の規定に基づき、別紙のとおり監査結果を通知します。

1請求の受理


 別記請求人から提出された請求は、所要の法定要件を具備しているものと認め、平成12年4月17日付けで受理した。

2 請求人の証拠の提出及び陳述


 請求人に対して地方自治法(以下、「法」という。)第242条第5項の規定に基づき、平成12年5月15日に証拠の提出及び陳述の機会を与えた。

3 請求の内容


 請求書に記載されている事項及び事実証明書並びに陳述の内容から監査請求の要旨を次のように解した。
(1)主張事実
 ア 岐阜県議会は、平成11年度議会費12億1,285万6,000円の予算のうち、議員報酬が8億3,326万円(1人当約1,450万円)、県政調査交付金が約2億円(1人当約400万円)、議員応招旅費は約5,100万円(1人平均約100万円)であり、他に県政調査旅費3,590万9,000円、海外事情調査費2,760万1,000円もある。

 イ 議員が本会議や委員会など議会の招集に応じた場合は、費用弁償条例第4条第2項「議長、副議長及び議員が議会又は委員会の招集に応じた場合の費用弁償の額は、別表のとおりとする」を根拠に、議員毎の距離に応じて、最低は岐阜市内等の9,800円から最高の高山市内等の21,600円まで、支給している。

 ウ 議員は「職務を行うため要する費用の弁償を受けることができ」(法第203条第3項)、この瘍合は「条例で定める」(同第5項)とされている。この際、「本会議日」及び「委員会会議日」の出席のみが正規の職務として、費用弁償の対象となる事は、以下に明らかである。
しかし、岐阜県議会では、「条例の応招とは会期中の全ての日を指す」と解釈し、議会開会中の正規の会議のない日にも、議会棟に登庁し、「議会事務局へ1枚の届出書を出す」だけで、会議へ出席したのと同じように費用弁償をしてきた。
 その額は、例年、1,500万円前後である。

 エ 応招とは、首長もしくは委員長の招集を受けて、「当該議員が議事堂(会議室)に赴いた第1日日」のみを指している。

 オ 議案精読や調査をどのように、どこで行うかは議員の任意の行為であり、員外議員の委員会傍聴も費用弁償の対象ではない、とされている。

 カ 会期中の本会議・委員会の会議以外の議員活動も、開会中の審査の議決を正しく経ていない委員会活動も、公務とは認定できない、とされている。

 キ このように、議会の会議のない日にも費用弁償を行う本件支出は、別途報酬や調査費等があることを考慮すればなおきらに、社会通念上決して許されるものではなく、法第203条第3項及び第5項、岐阜県議会議員の報酬、費用弁債等に関する条例第4条第2項、法第2条第14項、地方財政法第4条第1項に違反している。

 ク もし、岐阜県議会の解釈が正しいとするなら、県議が費用弁償の一部を受領していない現状は、議員が旅費請求権を放棄していることになり、議員は公職選挙法第199条の2の規定(公職の候補者等の寄附の禁止)に違反している。

(2)措置要求
 本件と同様の支出について、平成9年以来、問題提起されているところ、岐阜県知事及び県議会関係者らは、これを何ら改善する事なく平成10、11年と費用弁償を続けたのであるから、故意、過失責任は極めて重大である。よって、本件違法で不要な支出である平成11年度分の金1,500万円の全額を返還するよう岐阜県知事及び議会関係者らに勧告することを求める。

4 監査の実施


 請求があった事務を分掌する議会事務局を対象として関係書類の調査及び関係者からの事情聴取等による監査を行った。
 なお、本件請求の監査において、平野恭弘監査委員及び中村慈監査委貞は、法第199条の2の規定により除斥した。

5 監査の結果


 本件請求についての監査の結果は、次のとおりである。
 「知事及び議会関係者らに対し、違法で不要な支出である金1,500万円の全額の返還を求める」とする請求人の主張は、理由がないものとして棄却する。


 以下、その理由について述べる。
 本件請求は、議会開会中の休会日に登庁した議員への費用弁償についての公金の支出を違法・不当として、平成11年度の支出分全額に対して、その返還を求めようとするものである。
 ところで、本件請求は、平成10年5月18日付けの住民監査請求の中で監査の対象とした、議会開会中の休会日に登庁した議員に対する費用弁償について公金を支出する現行制度の違法性・不当性を理由に、岐阜県知事及び執行部、議会関係者らに県の損害を返還するよう勧告することを求めた主張と同一のものであると認められる。
 したがって、上記住民監査請求に対する平成10年7月13日付け岐阜県監査委員告示第8号に示した同一の理由により、平成11年度の支出行為が違法・不当な公金の支出とは認められない。
 なお、議会開会中の休会日に登庁した議員の登庁日、登庁理由の確認については、それぞれ、議員本人が文書で事務局に届ける方法でなされていた。また、議員に対する費用弁償の支出については、岐阜県議会議員の報酬、費用弁償等に関する条例(昭和26年8月6日条例第27号)で定める額が適正な手続きにより支給されていた。

(別記)
 山県那高宮町西深瀬208−1     寺町知正
 加茂郡八百津町潮見407       営澤杉郎
 加茂郡八百津町伊岐津志1405−1  白木康憲
 美濃市大矢田1434         後藤兆平
 養老郡上石津町上鍛治屋97−1    三輪唯夫
 岐阜市殿町4−8           堀安男
 揖斐那谷汲村岐礼1048−1     山本好行
 可児郡御嵩町上恵土1230−1    小栗 均
 岐阜市黒野471−1         別処雅樹
 不破郡垂井町1292         白木茂雄
 山県郡高宮町西辣瀬208−1     寺町 緑


《請求人の補足です》

※上記の監査請求書に平成10年7月13日付け岐阜県監査委員告示8号の写しが資料として添付してありました。
 この告示の本件関連部分は「議会開会中の休会日であっても、会期中は議会が活動能力を有する期間であり、その期間中に議員がその職務として登庁し、議案調査等を行った場合は地方自治法第203条3項の費用弁償の対象となる正規の議会活動と解する。なお、休会日における登庁理由等の確認は、文書で議員本人が事務局に届ける方法でなされていた。
 また、これらに対する費用弁償は、岐阜県議会議員の報酬、費用弁償等に関する条例で定める額が支給されていた。」というものです。

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